秋風が立つ頃、待ちに待った留学の時期が近付いてきた。しかし里恵の心は晴れなかった。グズオの女にされて以来、里恵は中だしし続けられたのだ。最初のうちに内緒で服用しようとしたピルも見つかってしまい、グズオに取り上げられてしまった。
「こんなもん飲むんなら、ボクは意地でも里恵を妊娠させるからな。ボクの子供を里恵の中に植え付けて留学にも行かせない。どこにも逃げられなくしてやるからね」
こうして毎回、ベッドや床にこぼれるほど、グズオの性を上と下の口の両方に注ぎ込まれた結果、里恵は妊娠した。
留学は不可能になった挙句、里恵はグズオと結婚するはめに陥ったのだった。グズオの執拗なつきまといと、妊娠という事実もあり、里恵は結婚を強要してくるグズオをはねつけることができなかった。まさしくグズオの思う通りに、里恵は追い込まれていったのだ。
ある日、里恵はグズオに連れられて、グズオの実家を訪れた。それはグズオのマンションから歩いていける距離にあり、大きなシンボル・ツリーのある豪邸だった。実は、グズオは田中というありふれた姓に隠されていたが、里恵の勤める会社の創業者一族だったのだ。
日当たりのいいリビングの黒い皮のソファの上で、里恵はかしこまっていた。大きな窓越しには庭が広がっており、そこが都内にあることを忘れさせるほど緑に溢れていた。
創業家、田中一族の当主であるグズオの父とその妻は白髪の上品な老夫婦だった。
「あなたのことは入社以来、ずっと注目していたんです。美しくて聡明で、もし久寿男が気に入って頂けたなら、結婚してもらって、いずれは経営にかかわってもらえたらなと思っていたんですよ」
グズオの父が、目を細めて告白した。
「パパ、仕事はいい加減にしてくれよな。里恵の一番の仕事はボクと愛し合って、沢山子供を産むことなんだから」
あまりのあけすけないい様に里恵は顔を赤らめ、両親も返す言葉がなかった。
「毎年、新入社員が入ってくるたびに、私は密かに久寿男ちゃんのお嫁さん候補を探していたんですよ。そうしたら久寿男ちゃんがあなたを見初めて、もう一目ぼれだったみたい。それからはお見合いも断り続けて、あなた一筋だったんですよ」
嬉しそうに語る母親の話に、里恵は結局、入社した時から久寿男の嫁になるべく、手繰り寄せられていたのだったと気付いた。
「ともかく、よろしくお願いしますね」
そう頭を下げる両親は晴れ晴れとした表情だった。一方、里恵は沼に沈むような、最低の気持になっていた。なぜならば、里恵はこれから365日、24時間、休みなして異常性欲者のグズオの相手をしなければならないからだ。
年の瀬が迫った頃、都内のホテルで里恵とグズオの結婚式が執り行われた。このニュースは社内に衝撃を持って迎えられた。まず社内のあこがれ的な存在で、美貌と知性を兼ね備えた里恵が、こともあろうかさえない外注スタッフのグズオと結婚するという衝撃の事実として。さらにそのグズオが実は創業者一族だったという驚きのオチがついていた。このことで、社内には様々なうわさが飛び交ったのだった。
そんな人騒がせな結婚式が終わり、二次会の会場。そこでは新郎新婦がくるまでのひと時、ビールを飲みながら里恵の同僚たちが思い思いの与太を飛ばしていた。
「いやー、しかし、里恵ちゃんがグズオと結婚するとは思いませんでしたね」
「それもそうだけど、グズオさんが会社の御曹司系とはびっくりですよ」
里恵の後輩の女子社員が興奮して話の後をうけとっとた。
「そうと知ってたら、私が結婚したかったんじゃないの?」
「やだ、ダメですよ。いくらお金があっても私は無理。絶対、グズオとはエッチできないもん」
「酷いこと言うね」
一同が笑った。
「でも里恵先輩は気が強いから、グズオさんも大変かもね」
女子社員がそう言い放つと、課長がいやいやと、とっておきの暴露話を始めるのだった。
「そうでもないと思うよ。実は今まで黙っていたけど、会社の帰り道にグズオの車が路肩にいたので、のぞいたら、グズオと目が合ってね。しかも俺に手招きをするんだよ。それで近づいていったら、驚きだよ」
「どうしたんですか」
「助手席に里恵ちゃんが座っているじゃないか」
「なーんだ。仕事の帰りでしょ」
「違うよ。座ってるんだけど、体がグズオに覆いかぶさるようになっていて、頭がハンドルの下にあるんだよ」
「ええ、どういう意味ですか」
「どういうもこういうも、車の中でその、…フェラチオさせられているんだよ」
「やだぁ。嘘でしょ」
「嘘じゃないよ。俺がのぞいているのも知らずに、里恵ちゃんが一生懸命しゃぶってるんだ。しかもグズオは、得意げに俺の顔を見るんだ。もうまいったよ」
「それでどうしたんですが」
「驚いて、呆れて、俺はそのまま帰ったけど、あれはどう見ても里恵ちゃんがグズオにご奉仕している感じだったな」
「へぇ」
「つまり夫婦の夜の主導権は、完全にグズオが握っているということだ」
「すごい話ですね。なんか里恵さんがつくすなんて、考えただけでも興奮して、ちょっと堪りませんよね」
「そうだろ。つまりグズオがそこまで里恵ちゃんをM調教したということだろ。あいつは、ただの金持ちボンボンじゃなくて、そっちのほうも凄いってことだね」
そんな内訳話に、全員が納得しつつも、妙に興奮したひとときだった。
二次会もお開きとなって、みんなが帰路についた頃、結婚式が行われたホテルのスイート・ルームでは、清楚に着飾った里恵が、興奮したグズオに獣のように責められていた。
大きなガラス窓に手をついて、尻を突き出している里恵を、グズオが後から突き入れて、思う存分責めているのだった。グズオのリクエストで、買い取った純白のウエディングドレスを再び身につけた里恵は、両手を窓ガラスについて、背中を反らせ、足を開いて思いっきりお尻を突き出していた。里恵のドレスの裾をはね上げたグズオは、その尻をむき出しにして、きっちりとアナルにはめ込んでいるのだった。そのゆっくりとしたストロークに合わせて、里恵が声をあげる。
「ああん、ああん、いい、お尻いいです。もう、溶けちゃう…」
「里恵はやっとお尻でもいけるようになったね」
「いやよ。意地悪なこと言わないで」
「お尻を練習しておいてよかったろ。子供が生まれるまでは、こうやって沢山楽しもうね」
「はい。…あはぁ、好きよ、あなた。…里恵のお尻にいっぱいちょうだい」
窓の外には都会のイルミネーションが輝き、はるか眼下の道路には、まるでミニカーのように、車が行き来している。
(ああ、墜ちる、墜ちる、墜ちて行く)
里恵は、ガラスを突き破って窓の外に飛び出し、そのまま体がどこまでも落ちて行くような、夢の世界を彷徨うのだった。(終)