2.どんくさい彼女

地獄待ちの玲子

大学を卒業した健二は、都内に本社がある文具メーカーに就職した。一方、慶子は親のコネを使って大手のマスコミ企業に契約社員の身分で潜り込み、責任のない部署で、OL気分を満喫していた。慶子からはそれとなく結婚のサインが何度か出されたが、健二は気づかないふりをしてそれを無視した。実は健二は慶子との付き合いにマンネリを覚えており、なによりも性の不一致を感じていた。そもそも性欲が強い健二は野性的で激しいセックスを求めていたが、淡白な慶子の対応はおままごとみたいなそれで、そのすれ違いから、健二の不満は溜まりに溜まっていたのだった。
健二の勤める文具メーカーでは、組織が花形の商品開発部と地味な営業部、そして宇宙人のシステム部といわれる三部門に分かれており、健二は営業部に属していた。問屋や小売店をコツコツと訪問する営業の仕事は、確かに地味で根気のいる仕事だった。ただ営業部には北米や欧州など、会社が展開する世界エリアに海外赴任するという道が開かれており、健二のような高偏差値の大学を出たものは、みなそれを狙って、熾烈な戦いを繰り広げていた。
この年の6月、夏休み前の四半期決算を終えた営業部は、前年越えのまずまずの成績を上げたこともあって、部長肝いりの「お疲れ様パーティー」が開かれることになった。
パーティー当日は殆どの部員が集合し、飲めや歌えの宴会が、場所をかえながら深夜まで続いた。
週末でごった返す繁華街で、健二たちの一行は二次会、三次会と店から店へ移るうちに人数が減り、とうとう一人になった健二は行きつけのバーにたどり着いた。地下のカウンターに陣取り一息ついた健二は、SNSで同僚たちの消息を探ったが、殆どが「家に帰ります」というメッセージを残して離脱していた。
時計を見ると、すでに12時近かった。
(仕方がない。ビールを一杯だけ飲んで帰るか)
その時、地下への階段を一人の女の子が下りてきた。その世界の人でなければ知りえないようなコアなアニメがプリントされたTシャツに、スキニーなジーンズを履き、小ぶりなグレイのバックパックを背負っている。それは健二の部にいる三輪玲子だった。
三輪玲子は宇宙人と呼ばれるシステム部から営業部へと派遣されている社員で、営業部内のパソコンシステムのトラブルシューティングを担当していた。
玲子はまさに宇宙人で、無口でとっつきが悪く、仕事柄一日中パソコンに向かっており、しかも時折ニヤニヤとモニターに笑いかけるので、まわりの営業部員たちは気味悪がっていた。ただ仕事は的確で、健二たちが陥るトラブルをあっという間に解決してくれるし、部員のバカみたいな初歩的な質問にも、愛想はないが、きっちりと答えてくれるため、部内の評判は悪くなかった。
しかし大きな眼鏡と刈り上げに近いショートカットで、痩せていて膨らみのない少年のような体つきをしているため、玲子を女として口説こうとする者はなかった。服装も年中、ジーンズにTシャツで、Tシャツにプリントされている図柄は、素人が知りえないコアなアニメのキャラクターだった。シャツの色や生地によっては、時々肩や背中にブラジャーが透けて見える場合もあるのだが、誰もそこに興味を払わなかった。
ただ注意深く観察すると、眼鏡の中は切れ長の二重で、鼻筋も通っている聡明そうな顔立ちで、話すと時々薄い唇の口角が綺麗にあがり、かわいい前歯をのぞかせるなど、意外に愛嬌がある顔立ちだった。スキニー・ジーンズの太腿は棒のようにまっすぐだが、ヒップは締まっていて、立体的に突き出たプリッとした丸いお尻をしていた。
その三輪玲子が階段を下りてきて、当たり前のように健二の隣に座った。
「あれ、三輪さん。お疲れ様です」
「お疲れ様です」
玲子がぺこりと頭を下げた。
「他の人は?」
「わかんないです。私一人だと思います」
「じゃあ、取り敢えず、なんか飲む?」
玲子は勧められるがままに、ビールを注文した。よく冷えたグラスビールを手に取ると、玲子は一気に飲み干した。ゴクリゴクリと飲み干す音と、喉の動きが妙になまめかしくて、健二はドキリとした。
「すごい飲みっぷりだね」
「ちょっと喉が渇いちゃって」
そういうと玲子は立て続けにビールを3杯呑んだ。
「酔わないの?」
「ぜんぜん」
まるで水でものんだかのように、玲子は爽やかに笑った。
「ところでさ、三輪さんいつも変わったTシャツを着てるけど、そのTシャツはなんなの?」
「これですか?」
興味を持たれたことが嬉しかったのか、玲子はTシャツのキャラクターについて語り出した。健二にはちんぷんかんぷんな世界だったが、持ち前の営業スキルを活かして、さも興味があるかのように、健二は的確な相槌をうった。その間、玲子は時には笑い、あるいはちょっと拗ねたりと、表情豊かに喋り続けるのだった。そのクルクルと変る表情がとても魅力的で、健二はついつい話にのめり込んでいった。
時計を見ると、もう夜中の2時近かった。
その夜、慶子は大学時代の友人たちと京都旅行に行っており、家に帰っても誰もいなかった。というか、この週末は、慶子はずっと京都なので、健二は煩わしい拘束から逃れて、羽を伸ばせるチャンスだったのだ。
「もう終電もないし。よかったらうちにくるか?」
そう言ってはみたものの、その時の健二は玲子に性的な魅力は全く感じていなかった。むしろ身振り手振りで話す令子から、もっと面白い話を聞きたいという気持が強かったのだった。それで酔いの勢いで誘ったところ、玲子はコクリとうなずいた。

部屋に玲子を招き入れると、健二は早速、冷蔵庫から白ワインを出し、ソファの前のガラステーブルに置いた。玲子はすました顔をして、ソファに座っている。まさか隣に座るわけにもいかないので、健二はテーブルをはさんで、絨毯の上にあぐらをかいた。
「ああ、今日はよく飲んだな」
「まだ飲めますよ」
玲子はワインを開けてグラスに注ぐと、いたずらっぽく笑った。その笑顔が意外にキュートで、健二はドキリとした。
「あのさ、ちょっと眼鏡外してみてくれないか」
「…」
玲子が眼鏡を外した。眼鏡の無い顔は野暮ったさが消えて、ボーイッシュで凛々しく、聡明さを感じさせる顔立ちだった。
「三輪さんは、眼鏡ないと意外とかわいいんだな」
「今頃気づいたの。遅いんだから…」
玲子の黒い瞳が、誘うようにくりっと動いた。
「でもガリガリに痩せてて、女の色気は無いけどね」
冗談っぽくそういって笑った健二に、玲子がむきになってきた。
「失礼にも、ほどがありますね。知らないでしょうけど、私は、ホントはエロいんだよ。まったく女を見る目がないよね」
「何言ってんだよ。だって、胸なんかぺちゃんこじゃないか」
「だから分かってない。意外とそうじゃないかも…なんだよね」
「じゃあ、見せてみろよ」
健二の挑発に、玲子はいどむような目つきでシャツを脱いだ。服の下からは予想通り、ぼんやりと透けて見えていた白いブラジャーがあらわれた。細い体にキッチリと食い込んでいる小さなブラは、生意気にも包み込んでいる乳房を寄せ上げていて、小さな谷間を健気にかたち作っていた。玲子は躊躇なく背中に手を回すと、ブラのホックを外し、胸を露わにした。
いつも馴れ親しんでいる慶子の片手に余るような釣り鐘型に実った大きな乳房と、ぷっくりと膨れた大きな肌色の乳輪に比べると、玲子のそれはあばらが透けている薄い胸に一握りの柔らかい胸の肉が飛び出る様についていて、頂きにある乳輪も小さく、いかにも熟れていない感じのピンク色だった。だが、それはそれで清楚で、そそる風情があった。
(へぇ、貧乳もムラっとくるもんだな。というか小さいけど、乳首もツンと上を向いているし、形のいい、そそるオッパイだよな)
巨乳好きの健二には、それは新たな発見だった。
「ほら」
令子が突然、上半身を上下に揺すった。それに合わせて、小ぶりな乳房がゆさゆさと揺れた。
「…」
「乳揺れはアニメの基本。これが男を引き付けるんです」
あっけに取られた健二に、玲子はそう言って、得意げに胸をそらせた。健二は一呼吸おいて唾を飲み込むと、身を乗り出して近づいた。そして、そっと乳房に唇を寄せて息を吹きかけると、やさしく吸いついた。舌先で乳首を転がしてやると、玲子はため息のようなよがり声をあげて、早くも体を震わせてきた。
「あははん、あん、だめ。あん、あん」
(こいつ感度いいなぁ。やっぱオッパイも小ぶりの方が感じやすいって、本当なんだな)
乳首を舌先で転がすうちに、玲子のため息は、やがてはっきりとしたよがり声に変わっていった。
「そこだめ、だめだったら。わたし、オッパイが弱いの。…すぐにいっちゃうの」
甘え声をだす玲子は、言葉とは裏腹に、健二の頭を抱きかかえて、もっと舐めてと言わんばかりに、自分の乳房を健二の唇に強く押しあててくるのだった。
「ああ、いい、いい、気持ちいい。もう変になっちゃう…お願い、噛んで」
言われたとおりに健二が乳首を口に含んで甘噛みしてやると、玲子は小刻みに痙攣し出した。
(こいつ、オッパイ噛んだだけで本当にいっちゃうのか?)
真相を確かめようと、健二は一旦、立ち上がって、玲子の隣に陣取った。そして右手で玲子のジーンズの前をはだけ、中に手を突っ込んだ。体にぴったり張り付いている小さなビキニのパンティの中に手を差し込むと、中指をワレメの中心に忍び込ませる。そこは予想以上にトロトロになっていた。健二は慣れた手つきで、指の腹でクリトリスをさぐりあて、押すように愛撫し始めた。そのリズムに合わせて、玲子が空腰を使い出した。
(こいつホントに好きもんだな)
玲子の反応の良さに感心し、余裕をかましている健二は、玲子のイキ顔を拝みたくなって、乳房から唇を外し、顔を覗き込んだ。目にしたのは眉間にシワをよせ、まるで何かを我慢しているかのような玲子の苦悶の表情だった。その様子を卑猥な言葉でからかってやろうとした瞬間、健二はいきなり唇を奪われた。
「ううう」
それは奪い取るような強引な口づけで、健二が逃げられない様に唇を完全にかぶせてきて、しかも舌をねじ込んでくるのだった。健二は仕方なくその舌を受け止めて、ゆっくりと吸い上げてやると、玲子は震えながら、ものすごい力でしがみついてくるのだった。
「あんたの事、狙ってたの」
「なんで?」
「性欲が強そうだから」
「ははは、なんで、そんなこと分かるんだ」
「だって忘年会で言ってたじゃない。一晩で最高6回やったって」
驚いた。確かに去年の忘年会の二次会で、そんな話題になって、大昔付き合った彼女と付き合い始めの頃に、ラブホで6回ハメまくったという自慢話をした記憶があった。
(でも周りは男ばかりだったはずだし、どうしてそんなこと知ってんだろう)
そういえば健二たちの近くのでテーブルに突っ伏して、玲子が寝ていたことをうっすらと想い出した。
(まさか寝たふりして、実は聞き耳立てて俺の話を聞いてたのか)
「6回なんて酒の上の冗談で、全くの大嘘かもしれないじゃないか」
「嘘じゃないよ。アンタはやりそうな顔してる。私には分かるんだ」
「なんで?」
「私も性欲めちゃ強いから」
とっぴょうしもない返事を笑い飛ばそうとする健二を、玲子は真顔で詰めてきた。
「ホントなの。私強いから、強い男じゃないと満足できないの。だからあんたは私にぴったりなわけ。だって、今の彼女は一晩に6回もやらしてくれないでしょ?」
「ええ?まあ、…それはそうだけどね」
「ほらね。私は6回なんてぜんぜん大丈夫だから。てか、今日は7回やるつもりだから」
「増えてるじゃんか」
「そう、新記録を私に刻んで欲しいわけ。だから今日は最低7回出すまで離さないから」
「それちょっと無理じゃないか」
「無理じゃない!」
令子が突然、大声を出したので、健二はびっくりした。
「もちろん途中でご飯を食べたり、お風呂に入ったりするのもありだよ。でも絶対に7回、搾り取るから。それまでは二人ともこの家から一歩も出られない。二人とも裸のままだからね」
そういうと玲子は早くもジーンズをかなぐり捨て、パンティ一つの姿になると、生足を絡めてきた。本当に健二をがんじがらめにするように、まとわりついてきたのだった。長い手足と柔らかい体が、蔦のように巻き付く。そのまとわりついてくる陶磁器のように白く冷たい肌がズボン越しに気持ちよくて、健二はなんだかうっとりとしてきた。そんな健二の股間に手を伸ばすと、玲子はズボンの上からソレを優しくなで始めた。
「ふふふ、やっぱり。すぐ固くなるね」
玲子は微笑むと、ズボンのファスナーを下げ、健二のものを中から引きずり出した。そしてやさしく握りしめ、緩やかなリズムでしごき始めるのだった。そのツボを押さえた感触に、健二はあっという間に破裂しそうになった。我慢出来なくなった健二は、玲子の両足をすくようにして、ビキニのパンティを一気にむしり取ると、アソコを丸出しにさせた。そして狙いをつけてそのテラテラと光る肉色のところに、ぐいっと腰を突き入れた。初めて入った英子のソコはぴったりと狭く、まるで包み込むようにフィットしてきた。
(おい、なんか、たまらない女だな)
健二は狂ったように腰を使った。
「いい、いい、ケンジ、いいよ。もっと頂戴…もう溶けちゃうよ」
玲子は体から絞り出すようによがり声をあげ、そのトーンがますます健二を興奮させるのだった。ギュッと締めつけてくる玲子の女の反応に合わせて、健二は1発目を発射した。それは眩暈がするほど気持ちがよかった。

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