浦辺タモツは三人兄弟の末っ子として、漁師町に生まれた。
九歳年上の兄のマモルは父親譲りで体が大きく、近所でも評判の乱暴者で、中学を卒業すると当然のように高校へは進学せずに父親と一緒に漁に出るようになった。
近所の人々は、暴れ者のマモルが大人しく父親の跡を継いだことにホッとし、神様に手をあわせたものだった。普段は気がいいが酔うと手が付けられなくなる父親ともども、この親子は近所の厄介者なのだった。
一方、五歳上の姉のシズ子は中学から髪を染め、その後当然のごとく妊娠して定時制高校を中退し、あっという間に三人の子持ちになっていった。シズ子の夫は年下で、妹の妊娠がもとで高校をやめ、浦辺家の命令で地元の土建会社に強制的に勤めさせられていた。もともとシズ子に言い寄られて、半ば強制的に関係を持たされ子供を作ってしまったこのヤサ男は、気の強いシズ子に牛耳られて暮らしていた。
後継ぎも決まったし、孫も出来たという浦辺家の中で、タモツはますますオマケのような存在になっていった。
体格はがっちりとしていたが、父親や兄とは違って背が低いタモツは、幼い頃から極端に無口だった。切れ長の細い眼は白目がちで、爬虫類のように表情に乏しかった。しかし感情を露わにすることが殆どないタモツは意外にも学校の成績が良く、無学な両親はこの得体のしれない息子の扱いに困っていたのだった。
その結果、無関心イコールの放任主義で育てられたタモツが、高校を出て直ぐに東京へ行きたいと言い出しても、反対する者は誰もいなかった。曾祖父の頃から漁師一本の家系の中で初めて普通科高校に進学したタモツが、大学へ行くなどと言い出したらどうしようと内心ハラハラしていた両親は、タモツの提案に胸をなでおろした。
こうしてタモツは親戚のつてをたどって、両親からみれば厄介払いを兼ねて上京し、料理屋で板前修業をすることになった。
ともかく家を出たかったタモツにとって、人と会話することが少ない料理人の仕事は好ましかった。タモツにとって世間はクソだったのだ。この世の奴らはどいつもこいつもくだらなく、話をする気がしないというのが、タモツが無口である原因だったのだ。バカと口をきくくらいなら、黙って作業をしている方がいい。つまり板前はタモツにとってうってつけだったのだ。
実際に修行を始めると、タモツはすぐに頭角を現した。漁師の子供なので魚を見る目は確かだったし、器用で集中力もあるタモツはすぐに親方に気に入られた。料理人の生命線である味覚に関しても、タモツには天賦の才能があった。
ところが上京後三年が過ぎ板前としての将来が見えかかった頃、タモツは自分を妬んでいた先輩とささいなことから大喧嘩し、修業先を飛び出してしまった。そして行くあてもなくブラついた場末の盛り場で、タモツの目に飛び込んできたのがスナックの住み込み店員募集の看板だった。
スナック・マキエはその名の通り、折原マキエという中年女が経営していた。五、六人が座われば一杯になるカウンターと四人がけのボックス席が二つという小じんまりとした店内は、もう五十に手が届こうというマキエと、リカちゃんと呼ばれるがおよそ名前とは似つかわしくない三十がらみの太ったホステスの二人が切り盛りしていた。
常連の噂によると、マキエはソープランドから叩き上げて、このスナックを手に入れたということだった。その噂が嘘でないことを、後日タモツは身をもって知ることになるのだった。
調理の心得があり無駄口を一切きかないタモツを、マキエはすぐに気に入った。タモツの活躍でお店のメニューも増え、それは客を増やすことにも大いに役立った。
しかも店の奥の三畳間で寝起きするタモツが放つ若い男の匂いが、同じ店の二階に住むマキエのイタズラ心に怪しい炎を灯したのだった。
辛酸を舐めようやく自分の店を手にしたマキエは、客と寝るようなまねは決してしなかった。もっともでっぷりと太っているマキエは厚化粧で、出るところに出ればオカマでも通用しそうな風貌だった。それでもたまに言い寄ってくる懲りない客がいないでもなかった。
「アタシはヤリつくしてるから、色ごとはお断り」
ベロベロに酔った勢いで口説いてくる客を明るくさばくマキエの決まり文句は、いつしかお店のウリにもなっていた。常連たちは「やりつくしのマキエ」などと酒の肴にして騒ぐのだった。そんな枯れきっていたはずのマキエの女の性に、タモツは我知らず火をつけてしまったのだ。
タモツが住み込んで三カ月たった夏のことだった。
夕方の開店前に銭湯に行くのがタモツの習わしになっていたが、その日は生憎銭湯が休みだった。マキエは風呂を使えという口実でタモツを初めて二階に上げると、タモツが入浴している隙に脱衣所に忍び込み、衣服を取り上げてしまった。マキエの計画通り、風呂を使い終えたタモツが服を探しに恐る恐る脱衣所から出てきた。マキエはバスタオルを腰に巻いただけのタモツに猛然と抱きついた。
千歩譲って、したたかに酔った暗がりであっても絶対無理なのに、西日がガンガン照っている部屋の中でいきなり巨漢のマキエに押し倒されたタモツは、生まれて初めて身の危険を感じた。
女について言うなら、タモツは板前の先輩に連れられて、ソープで筆おろしを済ませていた。しかし初めてのセックスは、タモツにとって、やっぱりこんなものかという虚無感しか残さなかった。小学生の頃に、家の離れに男を連れ込んでヤリまくっていていた姉を反面教師として見て育っていたせいか、タモツはセックスには冷淡だった。仰向けのヒキガエルみたいな格好で交わる姉の姿がおぞましく、その結果、女性を軽蔑するようになっていたのだ。
(女なんて、みんなサカリのついた犬猫だ)
タモツにとっては成長と共に少しずつ女らしくなっていくクラスメイトさえ、軽蔑の対象に過ぎなかった。
だからマキエに抱きつかれた瞬間、タモツは殺されると勘違いし、恐怖で身がすくんでしまったのだ。その隙に巨漢にものを言わせてタモツを絨毯の上に抑え込んだマキエは、あっというまにタモツの股間を露わにし、パクリと咥えこんでしまった。
俗に女のアソコはタコツボみたいに気持ちがいいなどと言う者がいるが、タモツの育った漁師町でさえ、タコツボに自分のものを入れたという豪の者はいない。しかしマキエの舌技はまさしくタコツボだった。人肌のぬめりの中で吸いつかれ、縦横無尽に動く舌にこなされ、回しに回されたタモツは、不覚にもあっという間に昇天してしまった。
「若いねぇ。たっぷり可愛がってやるよ」
唇の脇にはみ出た白い液を手でぬぐうと、マキエはにやりと笑ってワンピースを脱いだ。
あらかじめ下着を脱いでいたマキエは、あっという間に素っ裸になった。多分、昔は巨乳でならしたのであろう。絵にかいたような三段腹の上にある4段目から大きな乳房が円錐形に垂れ下がり、黒ずんだ大きな乳輪と野太い乳首がゆらゆらと揺れて腹を叩いている。目を落とすと、股間には黒々とした剛毛が四角く密生し、恐ろしげに逆立っていた。
この日を境に、タモツの女修行が始まった。若さとは不可能を可能にする、のは本当だ。頭がどんなに拒否しても、マキエの繰り出す秘技に、結果としてタモツは勃ちに勃ちまくってしまった。たとえ化け物相手でも知れば知るほど癖になる性の深みに、タモツはズブズブと沈んでいった。しかもこれまで禁欲的に生きてきたせいか、タガが外れたタモツは抜群の精力を発揮した。夜中から朝立ちまでが直結で、マキエを喜ばせた。
当初タモツを攻めまくったマキエは、頃合いを見計らってタモツに奉仕させるようにしむけていった。女が喜ぶ舐め方、いじり方、しゃぶり方を、タモツはその道のプロであるマキエに徹底的に叩きこまれていった。同時にマキエはセックスに対する女の心理や生理をこと細かく教え込んだ。
「女が一番感じるのは、セックスじゃなくてオナニーだよ」
ある時マキエはそう言い切った。女にとって挿入とは、男を喜ばせることで自分も間接的に喜ぶ行為に過ぎないという。つまり男の指使いと舌使いこそが女を喜ばせる決め手であり、挿入は気分次第のおまけだと言うのだ。
「ローション塗って入れるのは商売。快感はオナニーに限る」
斯界の権威に断言されると、タモツも納得せざるを得なかった。それ以降、毎晩、店がハネたあと明け方まで続くレッスンは、指は溶け顎がはずれてしまうのではないかと思えるほど厳しいものだった。
「タモッちゃん。最近、顔がリフトアップして男前になったねぇ」
夜の修行が三カ月を数えた頃、突然、カウンターに座った常連のオカマにからかわれたタモツはびっくりした。確かに毎晩顔の筋肉を使うせいか、自分でも輪郭がシャープになった気がしていたからだ。
「毎晩、変なもん舐めてるんじゃないの」
リカがケタケタ笑いながらからかった。
(この野郎、気付いてやがる)
タモツはリカに一瞥をくれると、ものすごい勢いでキャベツを刻みだした。
オカマの客にからかわれた翌日の夕方、いつも通りリカが出勤してきた。店内の掃除は開店前にリカが行う約束で、タモツも仕込みを終えるとそれを手伝うのが習わしだった。
しかしその日のリカはカウンターの前に座ると、一向に動く気配を見せなかった。タモツはリカを無視してモップを取り出すと、床を拭きはじめた。
「あんた、ママとデキてるでしょ」
思わずぎょっとなったタモツはリカを睨みつけた。リカはへらへらと笑いながら、タモツの鋭い視線を受け止めた。
「あんなデブのババァと、よくやるよ」
何かを想像しそれがツボにはまったらしく、リカが肩を揺らして笑い出した。
リカの想像が正しいことを認めるかわりに、タモツはリカの右腕をつかむと椅子から引きずり上げた。そのまま右腕を背中にねじり上げ、上半身をカウンターに抑えつけた。
「なにすんの、やめてよっ。うぐ……」
カウンターの上にあったダスターをリカの口に詰め込むと、タモツはリカのスカートを跳ね上げた。ぶよぶよした太腿の上に大きな尻がのっていた。営業用のサービスと称して生足で店に出るリカはストッキングをつけていない。ひらひらした安物のスカートの下にはピンクの生パンティが、大きな尻の肉で破れそうなくらいに張り詰めていた。
「同じことをしてやるよ」
パンティを力任せに引きはがすと、だらしなく弛んだリカのデカ尻が露わになった。タモツはすかさずリカの股に膝を入れ込んでお尻を左右にカチ割った。セピア色のお尻の穴の下にリカの女が花開いていた。左右の花びらが不ぞろいに伸び、黒ずんだドドメ色になっているマキエのそれとは違い、リカの花びらはお尻の穴をやや薄くしたようなセピア色で、ぽってりと収まっていた。周囲は薄い恥毛に彩られており、あっけらかんと口を開けている様が滑稽だった。
タモツはその花びらの中に指を差し入れた。
(女の一番の敏感所も人それぞれさ。米粒みたいに小さいのもあれば、赤ん坊の小指くらいに根太い奴もある。そこが根太い女はかなりオナニーをやりこんでいるから、強くしごいてやると喜ぶんだよ)というマキエの言葉が心に浮かんだ。リカのそれは予想通り大きく、すでにコリコリとしこっている。タモツは猛烈なテンポでそれをしごいてやった。
修行の効果はテキメンだった。またたくまにリカは潤ってきた。
「ああん」
空いている左手で口からダスターを外したリカは、悲鳴の代わりによがり声を上げた。
「ああ、いい。いいの。ああああん、ダメ」
いいのかダメなのか?つまり決めてよということだった。タモツはズボンのジッパーを下ろすと、リカを背後から串刺しにした。たっぷりと潤ったリカの人肌の中で、タモツは存分に暴れまくった。
「ねぇ、オッパイも」
リカが甘えてきた。タモツはブラウスの裾から手を突っ込んでブラジャーをずらし、乳房を揉みこんでやった。それはふにゃふにゃと柔らかく、揉みこむ力に応じて頼りなく形を変えていく。指で探ると根太い乳首が大きな乳輪ごと腫れあがっていた。
「とけちゃう。ああん、死ぬぅ」
タモツはガクガクと腰を震わせるリカの中から引き抜くと、本日一番のしぼり汁をデカ尻の上に放った。
タモツが床に落ちたパンティを拾いそれで自分を拭っていると、背後でリカがささやいた。
「ねぇ、アタシとつきあってよ」
リカはカウンターにつっぷしたまま、デカ尻を左右に揺らしながら甘えた声を出してきた。
「やだよ、ブタ女」
タモツは余韻に浸ってハートマークになっているリカにそう言い放つと、店の奥にある部屋に戻り、手早く荷物を纏めると店を飛び出した。