6.追い詰められて

囚われの真弓

道也との約束の時間が迫る中、真弓は自室の鏡の前で思い悩んでいた。道也が命令した服装は、藍色の極小ビキニのパンティーを履いてくることと、デニムのミニスカートの下はストッキングなしの生足にすることだった。
「上はタンクトップで、ノーブラでこい」
「そんな恰好、絶対にできません」
「じゃあ、特別に、ブラジャーはつけていいよ」
こうして言いつけ通りに白のブラの上に白のタンクトップを着てみたものの、デニムのミニスカートにしかも生足となると、その姿はセクシーを通り越していやらしさが全開だった。体に張り付くタンクトップは、真弓の胸のふくらみをこれでもかと強調していて、その下にはタイトなジーンズ素材のミニスカートがお尻をぴっちりと包み込んでいた。まるで真弓の全裸が容易に想像できるシルエットになっている。さらにスカートから飛び出した生足が、思わずむしゃぶりつきたくなるような色気を匂わせているのだ。真弓は自分の太腿が、細く引き締まった足首に比べボリュームたっぷりのムチムチであることが、恨めしかった。
(もっと細くて骨ばっていればいいのに。ムチムチしてて本当にいやらしい)
鏡の中の姿に、我ながら恥ずかしくなって、真弓は自然と顔が火照ってくるのだった。
あれこれためした結果、真弓は白いスプリング・コートを羽織ることを思いついた。そうすれば少なくとも膝の上あたりから体全体を隠すことが出来るので、安心して街を歩けそうだった。髪をポニーテールに結わくと、真弓はコートを羽織って、急ぎ足で約束の場所に向かった。
待ち合わせしたカフェに着くと、店の前で道也が待ち構えていた。
「こっち、こっち」
道也は真弓の手をひくと、カフェの外庭の一角に真弓を押し込めた。そこはほどよく観葉植物に囲まれている四人席で、周囲からは死角になる場所だった。ベンチシートの奥に真弓を押しやると、道也は当たり前のように隣に座った。
「おい、いいつけた服と違うじゃないか。コートを着ていいっていったっけ?」
「寒いんです」
「嘘つけ。今日は日中28度になる予報だぞ」
「…」
「ごたごた言わずにコートを脱げ。いうことを聞かないとここで素っ裸にひん剥くぞ」
そう脅した道也は真弓からスプリング・コートを取り上げると、それをもってトイレに駆け込んでしまった。タンクトップ姿で残された真弓は、胸のふくらみを少しでも隠そうと両手を胸の前で組み、肩をすぼめて待つしかなかった。
「ほら」
戻ってきた道也は意外にも真弓にコートを手渡すと、着るように命じた。真弓は慌ててコートを羽織ると、前ボタンをキッチリと留めた。その時、隣に座った道也の手が、コートのポケットの中に忍び込んできた。そして直に真弓のお腹を触ってきたのだ。
「きゃっ、やめて」
道也はトイレで、コートのポケットの内袋を切り取ってきたのだった。ポケット中に手を突っ込んできた道也は、真弓のスカートのジッパーを探り当てると、ゆっくりと上げていった。
「いや、やめてください」
真弓はそういいながら、コートの上から道也の手をおさえつけた。しかし道也の腕の力は強く、抗うことはできなかった。コートの下でじわじわとファスナーを上げられ、とうとうスカートが真っ二つに分かれてしまった。
「少し腰を浮かすんだ」
道也はファスナーが外れ一枚の布になってしまったスカートをコートの中で器用に丸めると、ポケットから抜き取ってしまった。
「もうやめてください」
涙をためてお願いする真弓の目の前に、道也は手にしたカッターをこれみよがしにかざした。そのままポケット中に手を入れると、空いている手をコートの前からつっこんで、パンティーの脇をつまみあげた。
「あばれるとケガするぞ」
そう脅しながら道也はパンティーの両脇を切り離し、そのままパンティーを抜きとってしまった。ポケットから取り出した脱ぎたての藍色のパンティーを、道也はまるでハンカチのように手に丸めて持つと、鼻にあてがって匂いを嗅ぐのだった。こうして真弓はコートの下で、ノーパン姿にされてしまった。
「もう、許してください」
真弓は恥ずかしさで気が狂いそうになった。
その時、通路から女性の声がした。
「あれ、真弓ちゃんじゃない」
それは真弓の大学の同級生の美津子と恵子の二人組だった。彼女たちは中学から内部進学であがってきた悪友コンビで、学内でいつもつるんでいて、気の弱い子をいじめることで有名だった。
「偶然だねぇ」
そう言いながら美津子が、道也の顔をあからさまにのぞき込んできた。
「…」
真弓は頭が混乱して、返事をすることもできなかった。
「ここ空いてるから、よかったら座ってよ」
道也が親しげに声をかけ、二人が真弓の目の前に座った。
「私、ちょっとトイレに行ってくる」
そういうと真弓は慌ててその場を逃れた。真弓がいなくなったとたん、二人組は道也と真弓の関係をあけすけに聞いてきた。
「真弓ちゃんに、カレができたなんて知らなかった」
「確か、失恋したばっかりっていう噂だったけど」
「ああ、そうだったみたいだね。でももう失恋からは立ち直ってるよ」
おれのお陰だといわんばかりに、道也が得意げに答えた。
「あんなに可愛いから、真弓ちゃんをカノジョにできてうれしいでしょ?」
美津子か道也のプライドをくすぐってきた。
「へへへ、本当に鼻高々だよ」
そう言って道也が笑った。
「ねえ、真弓ちゃんは上品でおしとやかだけど、意外と夜は激しかったりして」
「ちょっと美津子、変なこといわないでよ」
あまりにもあからさまな質問に、恵子が美津子をたしなめた。
「あらあんただって、興味があるでしょ」
言い合う二人を、道也は余裕の笑みを浮かべて、面白がっていた。
「最近の女の子は凄いこと聞くねぇ。いくらなんでも、それは秘密だよ」
「絶対喋らないから、教えて下さいよ」
美津子が食い下がってきたので、道也はまんざらでもない表情で喋り出した。
「激しいかどうかご想像にお任せするけど、ちょっと驚いたことがあったなぁ」
「なんですか」
「絶対に内緒だけど、秘密は守れるかな」
「大丈夫、約束しますよ」
「実はね。付き合いだしてからしばらくしたら、真弓がこういうんだよ。一杯愛して欲しいから剃っちゃったって」
「何を?」
不思議がる美津子に、恵子がダメ押しした。
「馬鹿ね、あんた。わかんないの。剃るっていったら、…あそこの毛ですよね」
「そうなんだよ。一杯舐めてほしいから、舐めやすいように剃ったっていうんだ」
「きゃー」
美津子が嬌声をあげた。
「うそー、あんな顔して大胆」
大げさに驚き顔をつくった恵子が、それにかぶせて言い放った。
「そうだよね。今の若い子はすごいなって思ったよ」
道也は恵子の驚きぶりに答えるように、あきれた顔で言うのだった。
「いや、若い子が全員そうだとは限りませんよ。恵子は知らないけど、私は剃ったりしてませんよ」
「私も剃らないわよ」
二人は声を立てて笑った。こんな会話が交わされていたことを、真弓は全く知らなかった。席に戻ってくると、二人組の姿は消えていた。
「これでも読んで、しばらく大人しくしなさい」
道也は真弓に新聞をおしつけると、コーヒーを飲みながら、何食わぬ顔で真弓のコートのポケットの中に手を差し込んできた。懸命になって新聞を読むふりをする真弓の横顔を眺めながら、道也はコートの中で素っ裸に剥かれている真弓の股間を、たっぷりと弄ぶのだった。中指でこまかく刺激されたクリが、固くしこってくる。
「ふっ…」
思わず声を上げそうになるのを、真弓は唇を噛みしめて堪えた。やがて十分に潤んできた女唇に道也は中指を滑り込ませて、それをゆっくりと抜き差ししながた、真弓の快感を追い立てていくのだ。中指を奥に忍び込ませたまま、道也は性器全体をつかむようにして、グリグリと刺激をあたえるのだ。その行為はコートに大きな染みができるまで、飽きることなく続くのだった。
それから数日後、真弓のクラスでは水泳の実技テストが行われた。実技と言っても名ばかりで、指定されたアスレチック・クラブの水泳教室に1日参加するだけで単位がもらえるという、学生にとってはすこぶるお得な授業だった。当然、人気のある授業だったので、その日のクラブの更衣室は若い女の子の熱気でむせ返っていた。面白いことに、女同士でも大きなオッパイは注目の的で、バストの大きな子は、中学や高校時代に、触らせてくれとお願いされることが多いのだ。真弓も高校時代にそういう経験をしていたので、なるべく目立たないように部屋の一番隅に陣取り、ポンチョ式のバスタオルで首から下をしっかりと覆ってから、服を脱いだ。そしてパンティーを足から抜き取りタオルの下で全裸になった瞬間に、突然、後ろから美津子に抱きつかれた。
「えっ…」
真弓は言葉を失った。そのまま美津子は真弓を羽交い絞めにすると、前に回った恵子がタオルをたくしあげた。二人の狙いは真弓のバストではなかった。
「やめて」
そう叫ぶ間もなく、真弓は下半身をむき出しされてしまった。美津子と恵子のお目当ては、真弓のそこを見ることだったのだ。二人の予想通り、真弓のそこは青々と剃り上げられていた。
「道也さんの話は本当だ。真弓ちゃん、剃ってるじゃない」
パイパンになった股間をむき出しにされて、真弓は床にへたり込んでしまった。涙がとめどなくあふれ出て、真弓は恥ずかしさに声を殺しながら泣いた。
(とんでもない秘密をばらされてしまった。もう学校には恥ずかしくて行けない。家に帰ってもあいつはやってきて、私だけでなく隙あらば、妹にまで手を出そうとする。…もう私には行く場所がない)
追い詰められた真弓は、水泳の授業など受けられるはずもなく、ノロノロと着替えると更衣室をあとにした。
(死にたい)
まるで魂が抜けたようにぼんやりと歩いてく真弓の傍らに、白いセダンが止まった。運転席から足早におりてきた道也が、さらうようにして真弓を助手席に押し込めた。そして慌てて運転席に戻ると、車を急発進させた。

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