木曜日の夜八時。俗にいうハナモクで、社員たちは早々に出払い、オフィスには誰もいなかった。机に足を投げ出した鉄男は、一通の携帯メールに見入っていた。それはさっき着信した、送主が不通知のメールだった。
『山内部長はずいぶんお楽しみです。添付の写真、他にもいっぱいあります。流出をふせぐために三〇〇万円用意しましょう。お金の受け渡しは追って連絡します』
メールには麻里子と一緒にラブホテルに入る瞬間の写真が何点か添付されていた。
(ふーん。しゃれた真似をするじゃないか)
山内は深くため息をつくと立ち上がり、明かりを消して、オフィスを後にした。
翌日の金曜日の朝、山内は麻里子のマンションの前に車を止めて張り込んだ。
マンションは外階段タイプの建物だったので、三階にある麻里子の部屋の玄関は道路の反対側から丸見えだった。
しばらくすると、部屋から麻里子が出てきた。いつものように重ね着のTシャツとジーンズのミニスカート、その下には黒いレギンスを履いていた。麻里子はこれから派遣の事務の仕事に行くところだ。今日は昼間までの勤務なので、一旦戻って、着替えてから鉄男との待ち合わせに向かうはずだった。車の中の鉄男には気づかず、麻里子は駅の方へ急ぎ足で歩いて行った。
脅迫メールの犯人は、麻里子の彼氏しかいなかった。どう考えてもその線しかない。であれば、そこをまず潰すだけだ。鉄男は素早く決断を下し、下準備を終えて、マンションの前に張り込んでいたのだ。
(ひょっとすると麻里子もグルだな)
それを思うと鉄男は少し寂しかった。
(大人をなめると火傷するということを教えてやる)
鉄男は車を近くのコイン・パーキングに入れ、足早にマンションに戻った。
オート・ロックの代わりを果たす筈の管理人室は留守だった。鉄男はなんなく麻里子の部屋の前に立った。ベルを押すと部屋の中で物音がして、インターフォンから寝ぼけた男の返事が聞こえた。
「はい」
「すみません。警察の者ですが、小暮麻里子さんのお宅でしょうか?」
「はい?」
慌てて玄関に走ってくる音に合わせて、鉄男はドアの覗き穴に警察手帳をかざした。もちろん偽物で、以前、CMの撮影で使った小道具だった。
ドアが開き、ボサボサの頭をした小柄で痩せた男が体をのぞかせた。鉄男は素早く一歩踏み出すと、男の腹に当て身を食らわせた。
「ぐえぇ」
不意を食らった男が、体を二つ折りにした。そのまま男を玄関の奥へ押し込むと、床に投げ飛ばし、首を決めた。あっという間に男が落ちた。鉄男は悠々と玄関のドアを締め、鍵をかけた。
昼過ぎ、玄関の開く音がして、いつものように麻里子が帰ってきた。
鼻歌まじりでキッチンに足を踏み入れた麻里子は、その光景に思わず叫んだ。
「みっちゃん、どうしたの!」
キッチンの向こうにあるリビング兼寝室の床に、ミツオがころがっていた。しかも後ろ手に拘束されているらしく、さらに口はガムテープで塞がれていた。
慌てて駆け寄った麻里子は、その傍らに鉄男が座っているのを見つけた。
「おかえりなさい」
鉄男が静かな声でいった。
「鉄ちゃん、…どうして?」
麻里子が口唇を噛んだ。
「いや、たいしたことじゃないんだ。実は麻里子の彼氏に強請られちゃってね」
鉄男の言葉に、麻里子の顔色がみるみる青ざめていった。
麻里子が仕事に出ていった後、部屋に踏み込んだ鉄男はミツオを気絶させ、手錠を使って拘束した。そして気がついたミツオから、ことの全てを聞き出していた。最近それとなく金回りが良くなっている麻里子を不審に思ったミツオは、麻里子の身辺を調べだした。携帯電話を全てチェックし、暇に任せて尾行も始めた。そして鉄男とのデートを嗅ぎつけたのだった。さらに二人が逢うと必ずホテルに泊まることが分かった時、ミツオは嫉妬に狂った。今までのセックスレスが嘘のように、こうなると麻里子と別れることは絶対にできない相談だった。いざ手放すとなると胸をかきむしるほど惜しい。あのむっちりとした体は絶対に離したくない。ミツオにとっての麻里子は、実はそれほどのいい女だったのだ。そこでまず、鉄男を強請って金を手に入れることを考えついたのだった。
「最初は麻里子もグルかと思ったけど、そうじゃないらしいね。でも本当のところは分からないけどね」
「私は何も知らない。ホントだよ」
麻里子が泣きそうな顔で訴えた。
「まあ、真実はどうでもいいんだ。ケリをちゃんとつければね」
「ごめんなさい。みっちゃんに言って、写真は全部返すから、それで許して」
「麻里子、そうはいかないんだ。今の世の中、写真なんていくらでも複製できる。ということは、どこにでも隠せるということだ」
写真や映像が完全なデジタル・データになっている現代では、パソコン、スマホ、携帯電話、ハードディスクやスティック・メモリー、さらにはネット上のクラウドなど、データを複製し、それを隠す場所は枚挙にいとまがない。昔のように写真のネガさえおさえればいいという牧歌的な話ではなくなっていた。
「だからこういう話は正しくケリをつけなければいけないんだ。簡単にいうと、写真は返さなくていいんだ」
「ええっ?」
「その代わり、オレも同じ物をもらっていく。そうすればお互いが痛み分けになる。冷戦時代のソ連とアメリカじゃないけど、お互いが強請りのネタを持つことが、完全な解決方法になるわけだ」
「どういうこと?」
「今からオレの目の前で、二人で愛しあってもらう。その写真をオレがいただく」
「…そんなことできません」
麻里子がきっぱりと言った。
「じゃあ、仕方がない。二つ目の方法は徹底的な警察の介入だ。彼氏のやったことは立派な恐喝だから、これから警察に行こう。かわいそうだけど実刑は間違いないよ。その後、民事でも徹底的に追い込む。オレは手加減しないから、こいつの一生はメチャメチャだ」
「それだけはお願い。許してください」
麻里子が大粒の涙を流した。
「だめだ。彼を救いたければ、オレのいうことを聞け。確かに恥ずかしいけど、その写真が世の中に出ることは絶対ない。お互い無事でいたいからね」
一歩も引かない鉄男の強い説得に、とうとう麻里子が折れた。
「ほら、早くやってやれよ」
鉄男の言葉に意を決した麻里子は、床に転がされているミツオの前に立った。そして太腿の上に馬乗りになると、ミツオのスウェット・パンツを脱がしにかかった。
「うう、ううう」
くぐもった声を上げて、ミツオが暴れだした。鉄男はミツオの頭の側に回ると、髪の毛を掴みあげ、頭を固定してしまった。
「折角、可愛い麻里子がじゃぶってくれるんだ。ジタバタするんじゃないよ」
髪の毛を鷲掴みにされて、ミツオが大人しくなった。
「静かにしてれば痛くしない。わかったか?」
鉄男はそう言い聞かせながら、髪の毛を掴みあげた手から力を抜いていった。ミツオが力なく頷いた。
麻里子がトランクスと一緒に、ミツオのスウェット・パンツを引き下げた。
「なんだ。情けねぇ。ちぢこまってるじゃないか」
ミツオのそれを覗きこんだ鉄男は悪態をついた。麻里子は鉄男を無視して、ぐったりと萎れているミツオのそれを摘みあげると、口唇を寄せた。そしてつるっと吸い込むように口に含むと、口の中で丹念にこねり、いやらしい音を立てて吸い上げた。
麻里子の温かい口の中で柔らかい舌にこね回されるうちに、ミツオのそれが徐々に力を漲らせてきた。その様子を鉄男は携帯のカメラに収めた。
「どう?麻里子は上手いだろ。お前、あんまりしゃぶってもらってないんだろ。だから、オレが教えといた。その訓練の甲斐あって、麻里子はおしゃぶりが大好きで、上手な女になったんだよ」
鉄男は得意げにそう言い聞かせると、麻里子に命令した。
「おい、麻里子。オレが教えた通りに、オッパイも使ってやれよ」
麻里子が口を離して、鉄男を見た。
(こいつしゃぶりながら、それをオレに見られることで、自分も興奮してやがる)
麻里子の顔は真っ赤に染まり、まるで酔っているかのような、とろりとした顔つきに変わっていた。黙ったまま、麻里子が重ね着しているタンクトップもろとも、勢い良くTシャツを脱いだ。ライトブルーのフルカップのブラジャーが、大きな乳房をぴっちりと覆っていた。
(これは見られたくないタイプのブラだな。これからセクシーなブラに着替えて、オレと逢うはずだったんだ)
鉄男はふとそんなことを思った。
麻里子が背中に手を回しブラを外すと、締め付けから開放されたFカップの巨乳が弾みでてきた。予想通り、乳首がすでにびんびんに尖っていた。
麻里子はためらうことなく、ミオツのそれを乳房の間にはさむと、両手で乳房を寄せながらしごき始めた。
「どうだ。気持ちがいいだろう。お腹に麻里子の乳首が擦れて、それが気持ちいいだろ。擦れるうちに乳首もどんどん硬くなっていく。つまり麻里子も擦れるのが、気持ちがいいってことだ」
麻里子は鉄男の喋りを無視して、乳房にはさんだミツオをしごき続けた。鉄男は、麻里子の動きに仰天しているミツオに笑いかけると、今度はミツオの足側にまわった。
今日の麻里子はデニムのマイクロ・ミニ・スカートの下に、黒いレギンスを履いていた。四つん這いになった麻里子は、乳房にミツオのものをはさみながら体を前後にすべらせている。そのためにお尻が高々とあがり、スカートからレギンスのお尻が完全にはみ出していた。
鉄男はレギンスの淵に指をかけると、パンティもろともレギンスを剥いた。
「いや」
驚いた麻里子が動きをやめた。
「続けるんだ」
鉄男の冷酷な命令に、麻里子がおずおずと動き始めた。
鉄男はひざ上までずり下げたパンティの中を覗き込んだ。ブラと同じライトブルーのパンティだ。顔を近づけてよく見ると、パンティの股布にちいさなシミが出来ていた。
(やっぱり。もう、濡らしてる)
パンティから目を上げると、麻里子の大きな尻がぱっくりと割れ、アヌスが丸見えになっていた。柔肉の谷間の奥で紫がかったピンク色に絞りこまれたそれは、ひくひくうごめいている。鉄男はアヌスに口唇をかぶせると、いつものように舌を踊らせた。
「…あああ」
麻里子がお尻を震わせて小さく喘いだ。鉄男はアヌスを舐めながら、その下につらなる女の襞に、やさしく指を差し入れた。予想通り、そこは十分に潤っていた。
「おい、麻里子。今、どうして欲しいか、正直に言うんだ」
「…舐めて、もっと舐めて下さい」
「どこを舐めて欲しいんだ?」
「お尻の穴とか…」
「ほかは?」
「…アソコとかです」
麻里子が消え入りそうな声で答えた。
一旦、麻里子から離れた鉄男は、お尻を丸出しにしている姿をカメラに収めた。そして次の命令を下した。
「よし、麻里子の言う通りにしてやる。今度は麻里子の好きな相いナメだ」
鉄男は膝に引っかかっていたレギンスとパンティを抜き去ると、麻里子の下半身を丸裸にして、再びミツオの頭側に陣取った。麻里子がおずおずと体の向きを変えた。ミツオの顔の真上に麻里子の尻がきたところで、鉄男がミツオの口を塞いだガムテープを外した。
「もうやめてくれ」
ミツオが叫ぶと同時に、麻里子の尻が降りてきて、ミツオの口を塞いだ。
「うう…」
またミツオが暴れようとしたので、鉄男は髪の毛を掴みあげた。
「おい、お前も麻里子をしっかり舐めてやるんだ。やらないと、首の骨をおるぞ」
鉄男の脅しにミツオが大人しくなった。麻里子がミツオをしゃぶりながら、ゆっくりとお尻を動かしだした。ミツオの顎から口唇そして鼻先まで、麻里子は自分の肉襞をこすりつけるように腰を使った。
「ほら、アソコだけじゃなくて、首を伸ばしてお尻の穴も舐めてやれ。麻里子はお尻の穴を舐められるのが大好きなんだよ」
そう言いながら、鉄男は麻里子に強制的に舐めさせられているミツオをカメラに収めた。麻里子が秘裂から漏らす涎で、鉄男の顔が濡れて光ってきた。そこを目掛けてシャッターを切った。さらに鉄男はお腹のまわりにまとわりついているミニスカート以外、殆ど裸の姿でミツオをしゃぶり続けている麻里子の姿を、いろいろなアングルからカメラに納めていった。
「どうだ、知らなかったろ。麻里子はアソコをツルツルに剃ってるんだよ。これもオレが教えてやったんだ」
鉄男はミツオを見下ろして誇らしげに言った。ミツオは驚きと息苦しさで、目を白黒させていた。
「よし、麻里子。そのまま一回、口で抜いてやれ」
鉄男の命令に、麻里子の口の動きが激しくなった。口唇を小さくすぼめると、ひょっとこのようにとがらせて、ミツオのそれを吸いながら顔を引いていく。そして口唇からはずれてしまう限界のところまで引くと、今度は喉の奥まで大きく吸い込んでいく。激しいストロークに、ミツオがたまらずに声を上げた。
「ああああ」
ついに両足の指を折り曲げるようにして痙攣すると、ミツオが精汁を放出した。麻里子はそれをすすり上げ、喉を鳴らして飲み下した。そして最後の一滴まで絞り上げるように、麻里子は頬を凹ませてミツオを吸い上げた。
「よし、よくやったな。じゃあ、麻里子にはご褒美をやる」
興奮で真っ赤になった顔を上げた麻里子に、鉄男が微笑んだ。
再びガムテープで口を塞がれたミツオは、二人がけのソファの前で、ソファを背もたれにして足を投げ出す格好で、床に直に座らされていた。
その前で、大きく股を開いた素っ裸の麻里子が腰をうねらせている。麻里子は胡座をかいて座っている鉄男の上に、鉄男に背を向けるようにして座り込んでいるのだ。
大きく開いた足の間には、濡れてテラテラと光る肉厚の秘裂が、鉄男のペニスを頬張っているのが丸見えになっている。草むらを全て剃りあげているので、そのいやらしい肉色の光景が、ミツオにはモロ見えだった。
下から突き上げる鉄男の動きに合わせて、麻里子も腰をうねらせる。鮭肉色の肉襞が、麻里子の動きにあわせてよじれ、もつれる。その間を鉄男の巨大なペニスが出入りし続けた。
「どうだ。良い感じだろ」
鉄男は腰の動きを一旦止めると、麻里子の乳房をぐずぐずに揉みながら言った。
「おい、今、麻里子がなにをしてるか分かるか?麻里子、彼氏に言ってやれよ。今、麻里子は何をしているんだ?」
「…」
「正直に言わないと、終わらないぞ」
鉄男の脅しに、麻里子がおずおずと口を開いた。
「締めてる。鉄ちゃんのをアソコで締めてる」
「どうやって?」
「お腹に力を入れて締めてる。そうすると気持ちがいいの。形がわかって、マリも気持ちがいいの」
正直に打ち明けた麻里子をミツオが食い入るような目で見つめた。
「よし、正直に言ったご褒美だ」
麻里子の乳房を鷲掴みにしながら、鉄男は再びずんずん突き上げていった。鉄男の掌で、麻里子の乳房が縦横に形を変えた。時々、両の乳首をつまみ上げ、それを捻り上げると、麻里子がたまらず声を上げた。
「あああ、ダメ。それダメ」
ミツオは股間をいきり立たせて、麻里子の痴態を食い入るように見つめていた。ガムテープで口をふさがれているものの、興奮で息があがっているのがわかった。
「驚いたか?麻里子は凄いだろ。お前は知らなかっただろうけど、もう蕩けそうに抱き心地のいいオンナなんだよ。おしゃぶりも上手いし、喜んで一滴残さず飲んでくれるし、アソコだってきつきつによく締まる。お前にはもったいない、たまらない女なんだよ」
鉄男の問いかけに、ミツオはただただ目を丸くするばかりだった。
「でも、驚くのはまだ早いぞ。お前は知らないだろうけど、麻里子はこうされると、もっと喜ぶんだ」
鉄男は麻里子の股間に手を伸ばすと、襞の中からクリをむき出しにした。そして親指と人差指でつまみ上げ、ゆっくりとしごいていった。
「いやあああ。鉄ちゃん、やめて、そこはやめて。おかしくなっちゃう」
鉄男がしごくスピードをどんどん上げていく。
「ほら麻里子、どんな気分だ」
「イヤア…ああん、ああん」
「今の気分を彼氏に聞かせてやれよ。どんどん締めてるじゃないか。ほら、早くいつものように潮を吹いてみろよ」
「いや、潮はいや。お願い許して…」
「だめだよ。吹かしてやるよ。正直に言え。気持ちいいんだろ。何がいいんだ?どこがいいんだ?」
「いい、鉄ちゃんのがおっきくていい。オマメも凄くよくて、こわれちゃいそう」
鉄男が腰の突き上げをさらに加速させた。麻里子はもうわけがわからなくなって、泣きだした。涙とよだれでグズグズになった麻里子が、獣のような声を上げた。
「ああああうううう、漏らしちゃう…潮が出ちゃう」
ついに麻里子がピュッ、ピュッと断続的に潮を吹き、床に水たまりを作った。そして引きつるように痙攣して前につっぷした。
その姿をミツオは目を見開いて見つめていた。
「おい、麻里子。ミツオの奴、ギンギンになってるぞ。お前がやられて潮を吹かされているのを見て、相当興奮しているみたいだな」
鉄男は麻里子の顎に手をかけると、顔を引き上げた。
「みっちゃん」
麻里子がぼそりと呼びかけた。ミツオは食い入るように麻里子を見つめていた。その股間は猛り狂ったように起立していた。
「ほら、やってやれよ」
鉄男がお尻を押すと、麻里子はそのまま四つん這いになって、ミツオににじり寄っていった。抜けるように白く、丸いお尻をくねくね動かしながら、麻里子は四つん這いでミツオに近づいていった。太腿の間で濡れて光っている肉襞が、歩くたびによじれる様子が丸見えだった。麻里子は太腿の内側まで濡らしていて、そこがテラテラと光っていた。
「みっちゃん、好きよ」
麻里子はミツオ上にまたがると、硬くなったそれに手をあてがい、ゆっくりと腰を沈めていった。麻里子の柔らかい肉の中に、ミツオがズブズブと沈んでいく。やがてすっぽりと咥え込んだ麻里子は、ゆっくりと腰を使い出した。
「あああん。あああん」
まるで雨上がりのぬかるみの土の上を歩いているような音を立てながら、麻里子はミツオを奥へ奥へと咥え込んでいった。そしてガムテープを外すと、ミツオの口唇にむしゃぶりついた。待っていたかのように、ミツオの口唇が麻里子に応えた。激しい音を立てながら、二人は舌を吸いあった。
「みっちゃん、大好きよ」
麻里子は乳房をミツオの顔に押し付けた。ミツオが乳首を頬張り、音を立てて吸い上げた。
「いい、いい。みっちゃん、もっと吸って。麻里子のオッパイめちゃめちゃにして」
麻里子は狂ったように腰をうねらせた。
「ううう、麻里子」
ミツオが唸り声をあげながら、精汁を放った。
「もっとちょうだい。麻里子に全部頂戴」
ミツオから最後の一滴まで搾り取るかのように、麻里子は腰を使い続けた。
数度のエクスタシーを経て、麻里子はようやく腰の動きを止め、落ち着きを取り戻した。ミツオの胸に頬を当てて、全体重を預けるように、麻里子はぐったりと覆いかぶさっていた。口で一度、アソコに三度。すでに四回はいっているはずなのに、ミツオのそれはまだ力を漲らせており、麻里子の中に深く沈み込んだままだった。ミツオを頬張っている麻里子のそこを、鉄男は携帯カメラに収めた。白いお尻の谷間に絞りこまれたアヌスが、ひくひくと息づいていた。
鉄男は携帯をしまうと、麻里子の顔の前に陣取った。
「ほら、これはオレからのプレゼントだ」
鉄男が傍らの床の上に、封筒を置いた。
「二〇万円入っている。でも勘違いするな、これは生活費じゃないぞ。お金と一緒にオレの知り合いの弁護士の名刺が入っているから、そこへ二人で行って相談してこい。自己破産してきれいさっぱり、人生をやり直すんだよ。二〇万円はそのための弁護士費用だ。それからこれは手錠の鍵」
そう言い残すと、鉄男は鍵を封筒の上に置き、立ち上がると玄関に向かった。
「愛してるよ、麻里子。麻里子」
鉄男の背後でミツオが声を上げた。振り返ると手錠を外されたミツオが、体を入れ替え麻里子に馬乗りになって腰を使っていた。
「みっちゃん、愛してる」
「オレもだよ。麻里子は誰にも渡さないからな。一生オレのものだからな」
「離さないで」
「絶対、誰にも渡さないからな」
ミツオが麻里子の大きな乳房にむしゃぶりつきながら叫んでいた。
(こりゃ、しばらくは毎晩やりまくりだな)
鉄男は苦笑すると、若い獣たちの匂いが充満した部屋をあとにした。
それから一年後、営業の外回りを終えた鉄男は、夕暮れの街角で偶然、小暮麻里子と出くわした。
「山内さん、お久しぶりです」
麻里子は一年前と変わらない、輝く笑顔を向けてきた。
「おお、元気か?」
「お陰様で」
「そっか。それで彼とはその後どうなった?」
「一緒に暮らしています。みっちゃんも音楽をやめて、いまは運送会社に勤めています。免許がないからドライバーになれなくて営業職だけど、先月、正社員になったんです」
「へー、凄いね。麻里子も働いているんだろ」
「事務の派遣で頑張っています」
「そう、よかったな」
「山内さんのお陰で借金もなくなったし、実は私たち今年の年末に結婚することになりました」
「それはおめでとう、本当によかったね。…それでどうなの?」
鉄男がニヤリと笑った。
「どうなのって?」
「夜のほうだよ」
声を潜めた鉄男の言葉に、今度は麻里子がケタケタと笑い出した。
「鉄ちゃんは相変わらずだね。もう、あれから燃えまくりですよ。毎晩、狂ったように抱きついてきますから、私は休む暇なし。生理の時はせがまれて口でしてますよ。セックス・レスは完全に解消したから、もう心配しないでください」
麻里子が明るくズケズケと答えてきた。
「よかったな。仲良くやるのが一番だよ。お尻やおしっこもやってもらってる?」
「もうやだなぁ。相変わらず露骨すぎるよ」
麻里子が顔を赤らめた。
「なんだよ、いまさら隠すなよ」
「もう、…教わったことは全部やってますよ」
恥ずかしさに頬を染め、呆れ顔をした麻里子は、懐かしいあの頃のままだった。
「でも、久しぶりに会ったのに、すぐにそんなこと聞くなんて、鉄ちゃんも変わらないなぁ。それより鉄ちゃんこそどうなんですか?私の後釜はいるんですか?」
「それが全然ダメ」
おどけた鉄男に、麻里子が笑った。
「じゃあ、いい子がいたら紹介しようかな」
「ああ、頼むね。麻里子みたいに巨乳の子」
「残念だな。私みたいにいい女はめったにいませんよ」
「そりゃそうだよな」
「最初から知ってたと思うけど、私が鉄ちゃんと付き合ったのは、お金のためだけじゃないんですよ。いくらお金が欲しくても、私はあんなことを誰とでもするような女じゃありませんから」
いきなり一途な視線を向けてきた麻里子に、鉄男は戸惑った。
「私、前から、会社にいた時から鉄ちゃんのことが好きだったんです」
鉄男は無言で固まった。
「だから偶然会った時は本当に嬉しかった。それでああなって…恥ずかしいことでも何でも許したのはお金じゃなくて、鉄ちゃんが好きだからですよ。本当はあのまま結婚したいと思っていた。でも、もう無理だから、諦めました。だって、目の前で、彼とやらされちゃったから。そんな女と結婚しませんよね。…っていうか、結婚したい女に、そんなことさせませんよね?」
麻里子の予想外の告白に、鉄男は目の前が真っ暗になった。
「だから、悔しいから、鉄ちゃんには女の子は絶対に紹介しません。自分で頑張って、いい人探してくださいね。鉄ちゃんなら、きっと見つかりますよ」
爽やかな笑顔を残して、麻里子が雑踏の中に消えていった。
麻里子と別れた後、鉄男は急に足取りが重くなるのを感じた。
(そうだよな。小暮麻里子みたいないい女には、もう一生逢えないよ。なんだ、大失敗じゃないか)
鉄男は、自分の人生が黄昏れてきたような気がした。(終)