1.獲物をいたぶる

隷属の沙希子

木曜日の夕暮れ時、鬱陶しい梅雨空が一休みしたせいか、都心の繁華街は人込みでごった返していた。
約束の時間の五分前、沙希子がターミナルビルから出てきた。タモツは大通りをはさんだ反対側のビルの二階にある喫茶店の窓から、その姿を見つけてほくそ笑んだ。
待ち合わせの場所に立った沙希子はグレーのスーツを着ていた。それは体の線を際立たせるタイトなスーツではなく、むしろ体型を隠すような直線的なデザインのものだった。しかも襟元からのぞく白いコットンのブラウスが、全体の印象を野暮ったく見せていた。
だが前を通り過ぎる、いわゆる女に目ざとい男たちは沙希子の顔に目をとめ、そこから一瞬で全身を舐めるように見ながら通り過ぎていくのだった。
沙希子は二二歳のOLだが、女子高生みたいな幼い顔立ちをしている。くっきりとした二重瞼、アーモンド型の目の中にキラキラと輝く漆黒の瞳、すらっと通った上品な鼻筋、そして薄くルージュをひいたふっくらとした唇。整った容姿はまさに美少女だった。茹で卵のようにつるつるした可愛いオデコを前髪でさりげなく隠し、サイドは肩までで切り揃えたショートカット・ヘアが、沙希子の顔立ちをより幼く見せていた。
その愛くるしい顔立ちとさえないOL風の服装が醸し出すアンバランスな感じ、つまりは大人子供っぽさが男たちの興味を引き付けるのだった。
自分を容赦なく舐めまわしてくる不躾な男たちの視線を感じるのか、沙希子は肩にかけていたバックを外し、胸にだき抱えた。黒いパンプスのつま先をちょこんとそろえ、黒いストッキングに包まれた小さな膝をスカートの裾ぎりぎりにのぞかせて立ち尽くすその姿は、まるで家出少女のようにはかなげだった。
喫茶店の窓からそれをニヤニヤしながら見ていたタモツは、心を躍らせて店をあとにした。
横断歩道を渡り、ゆっくりと沙希子に近づくと、タモツに気づいた沙希子が早くも半泣きになっていくのが分かった。への字に歪みそうになる口もとを強張らせて、沙希子は泣きそうになるのを懸命に堪えている。もっとイジめてやりたいという黒い欲望が、タモツの中でむくむくと湧きあがってきた。その気持ちの高まりを抑えながら、タモツはわざとゆっくりと歩き、沙希子の目の前に立った。
「おまたせ、行こうか」
素早く沙希子の腰に右手を回し、タモツは沙希子を抱きかかえるようにして歩きだした。
一六〇センチ前半と、男としては小柄な部類に入るタモツは、ヒールを履いた一五五センチの沙希子とほぼ同じ身長になる。しかしそれは歩きながらあれこれと沙希子の身体をいじり回すのには都合がよかった。
ジャケットの上から腰のくびれにしっかりと手のひらをあてがって歩くと、服を通して沙希子の体温がじんわりと伝わってくる。さらに歩くテンポに合わせて沙希子の腰がクリクリと動く感触が、タモツの妄想を掻き立てた。
(むっちりとしたお尻の肉が、オレに命令されていやいや履かされている小さなパンティの股ぐりからはみ出している。それが歩くたびに、右に左にキュッ、キュッと締まりながら動いているんだ)
そう思うとタモツはたまらなくなって、腰にあてた手をお尻に滑らせ、右のお尻の肉を手のひら一杯に掴んだ。柔らかく張り詰めた肉が、タモツの指を弾き返してきた。
「いや。やめて下さい…人が見ています」
沙希子は慌てて腰をひねり、タモツの手を振りきった。
「見られると困るのか。じゃ、見えなきゃいいんだな」
タモツはそうウソぶくと、もう殆ど泣き顔になっている沙希子の肩を抱き寄せ、肩越しに手をジャケットの下へと伸ばしていった。
「やめて下さい」
タモツの企みを知った沙希子が、慌ててタモツの腕の中から逃げようとする。それを強引にひき寄せ、タモツは沙希子が前抱きにしているバッグの下に手をもぐり込ませた。そしてジャケットの中に強引に手を入れて、ブラウスの上から左の乳房をぎゅっと握るのだった。
「これなら誰からも見えないからいいだろ」
タモツはニヤつきながら、沙希子の顔をのぞき込んだ。
「…ひどい」
バッグで隠しているとはいえ、肩越しにジャケットの中に手を突っ込まれて、乳房を握られている。沙希子は恥ずかしさのあまり顔から首筋まで真っ赤になり、周囲の視線から逃れるようにうつむいた。
すれ違う人の中には、地味で真面目そうな女の子が男に胸を揉まれながら歩いている姿に驚き、中には好奇の視線をあからさまに浴びせる者もあった。しかし、タモツはそんなことはおかまいなしだった。歩きながらバッグの下で沙希子の乳房を揉みあげた。
もともと着やせするタイプの沙希子は、自分の体型を服装で隠すのが上手かった。一見あどけない少女に見えるその内側に、沙希子は豊満な女の身体を隠し持っているのだ。思えば高校入学の頃から突然大きくなってきた胸やお尻は、沙希子にとってずっと悩みの種だった。お風呂場で裸になると、コンビニの棚に並んでいるいやらしい漫画の表紙で微笑むヒロインのように、幼い顔立ちとは不釣り合いなほど胸やお尻が膨らんでいる。小学生のように細くきゃしゃな手足や薄い肩に比べて、そこだけが異様に膨れて、女であることをアピールしているのだ。
沙希子はそれが、とてつもなく恥ずかしかった。そこで沙希子は少し大きめのサイズでウエストのラインがルーズになる服を選ぶことで、むっちりと張り出た胸やお尻の曲線を服の下に隠し続けていたのだった。
実際に、ジャケットの上からは一見扁平に見える胸に手をあてがうと、沙希子の乳房が大人の手のひらに余るほど大きいことが分かる。その張り詰めた乳房をタモツは手のひらいっぱいに握り、じょじょに力を入れて絞り上げていった。小柄だが手足の大きいタモツは、高校時代は腕相撲で負けたことがないのが自慢だった。その自慢の握力で、タモツは沙希子の乳房を万力のように締め上げていった。
「やめて、いや、痛い。…あ、あん」
歩きながら女の急所ともういうべき乳房をきつく絞り上げられた沙希子は、強烈な痛みをともなう痺れた感覚に耐えきれず、ついに小さな甘え声をあげた。
その声に満足したタモツは握力をゆるめ、今度は手のひらをゆっくりとこね回し始めた。柔らかい肉の感触の奥に、若い娘の乳房特有のしこしこした硬さが、手の動きに逆らってくる。少し力をいれて、さらにこねってやると、次第に乳房全体がパンパンに張ってくるのがわかった。
「オッパイを揉まれながら、歩く気分はどうだ?気持ちいいだろ?」
「もう許して下さい」
「そんなこと聞いてないぞ。オレはオッパイ揉まれながら歩く気分はどうだって聞いているんだ。ちゃんと質問に答えろよ」
「痛いし、…恥ずかしいです」
「そうか。じゃあ、やさしく揉んでって、お願いしろよ」
「無理です。そんな恥かしいこと言えません」
いやらしい答えを口にすることが出来ずに、もじもじする沙希子を、タモツはもっと苛めてやりたくなった。
「素直じゃないなあ。本当は気持がいいんだろ?ちゃんと正直に言わないと、ブラウスの中に手を突っ込んで、ブラを外して生で揉むぞ」
「やめて。言うからもうこれ以上しないで。…気持ちいいです」
「どこが気持ちいいんだ」
「…オッパイです」
「もっとオッパイ揉んでって、言ってみろ」
「…オッパイを…もっと揉んで下さい。」
「そうやって最初から素直に言えよ。これからデートの時は、必ず揉みながら歩いてやるな」
「そんなのいやです」
「遠慮するなよ。実は気持ちが良すぎて、オマンジュウも濡れているんじゃないのか?」
「そ、そんなことありません」
「よし、後で調べてやる。もし濡れていたらお仕置きだからな。死ぬほど恥ずかしい目にあわせるぞ。例えば子供にさせるみたいに両足を抱え上げて、お風呂場でおしっこさせてやる」
「いや、しないでください」
あまりの言葉に驚いた沙希子は顔を上げ、すがるようにタモツを見た。
「じゃあ、浣腸して、ウンコをするところを見てやろうか。よし、今から薬局へ寄ろう」
「い、いや。絶対にいやです」
「じゃあ、正直に言えよ」
タモツの脅しに怯えた沙希子は、小声で白状するしかなかった。
「きっと、少し、…濡れています」
「どこが?」
「オ、オマンジュウです」
「ははは、言った通りじゃないか。もうオマンジュウが濡れちゃったか」
タモツがわざと大声でからかった。
「お願いですから、大きな声で言わないで」
「もうびしょ、びしょか?」
「…少しです」
タモツは身体の状態を正直に白状した沙希子の耳にぴたりと唇を当て
「そうやって素直に良い子にすれば、優しく可愛がってやるよ」と小声で囁きながら、裏通りへと引きずり込んでいった。

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