明け方、タモツから解放された沙希子は、ぐったりと疲れ果てて自分の部屋に戻ってきた。
部屋に戻ってすぐ、沙希子はタモツに持たされた黒い張り型を鞄からつまみだした。長さ二十センチほどの黒いプラスチックが、露骨に男の性器を形作っている。それはついさっきまで沙希子が咥えこまされていたタモツのそれにそっくりだった。すぐに捨ててしまいたかったが、ゴミ置き場を管理するマンションの管理人に見つけられたらと思うと、沙希子は恥ずかしくて捨てる勇気が出なかった。仕方なくつまみ上げてコンビニの袋に入れると、使っていないタオルでグルグル巻きにしてクローゼットの奥に仕舞い込んだ。
そのまま服を脱ぎ捨てて、沙希子はシャワーを浴びた。
結局、タモツは三回続けて沙希子の中に放ち、その後、再び沙希子を風呂に連れ込んだ。そして沙希子の身体を好き放題に舐めまわし、柔らかい場所を選んでは気まぐれに噛みつき歯型をつけていった。
「オレの愛人という印だ。うれしいだろ」
自室の浴室でシャワーを浴びながら、沙希子はタモツのおぞましい言葉を思い出していた。両方の乳房やわき腹、内腿の付け根、下腹、お尻。タモツは服の上からは見えない沙希子の柔らかい部分に噛みつき、タコのように唇を尖らせて吸いついて歯型をつけていった。それは沙希子の抜けるような白い肌に赤いあざとなって残っていた。沙希子は何度もタオルで擦ったが、それらが消えることはなかった。
シャワーを股間に当てて、指を自分の花びらに差し入れてくつろげ、なかを丁寧に洗い流す。沙希子は今まで、そんな恥かしいことをしたことがなかった。しかしタモツの爪跡を全て洗い流すために、沙希子は一生懸命、指を入れて洗った。
旅館でタモツに中で出された後に、沙希子は泣きながら避妊を頼んだ。
「やだよ。中に直接出さなきゃ、した意味がないじゃないか」
タモツは冷たく言い放った。そればかりか、「昔から仲の良すぎる夫婦は子宝に恵まれないというから、オレたちも毎日やりまくれば大丈夫だ」などと勝手な理屈を言い出す始末だった。
「毎日、死ぬほど可愛がってやるから心配するな」
タモツは沙希子にとって絶望的な言葉を平然と言い放つのだった。
仕方なく沙希子は切羽詰まった自衛の手段として、指を入れて洗っているのだった。時折、シャワーが敏感な部分を叩く。長時間にわたるタモツの執拗な愛撫によって、沙希子のそこは未だに腫れあがったように充血していて、ちょっとの刺激に敏感に反応するのだった。
「あん」
シャワーの刺激に思わず声が出てしまう。沙希子は死にたいくらいの恥ずかしさと嫌悪感に苛まれながら、声を上げて泣きながら股間を洗い続けた。
ようやくシャワーを終え、沙希子は湯船につかった。頭の中にはいやでも昨夜のことが蘇った。身体はボロ布のように疲れているのだが、そのことが頭から離れなかった。
(今までされたことがないような恥ずかしいことをされた)
思えば田川との初体験は身体が裂けてしまいそうな強烈な痛みをともなうものだった。沙希子は必死になって痛みに耐え、それが終わるのをじっと待った。田川を心から愛していたが、行為そのものは沙希子に我慢だけを強いる、辛いものでしかなかった。ただ、それが嵐のように過ぎ去り田川に抱きしめられた瞬間、沙希子は大きな安心感を味わった。これが女の喜びなんだと、沙希子は勝手に思い込んだのだった。
一方、タモツは沙希子に痛みを感じさせなかった。それどころか沙希子が知らなかった強烈な快感を、身体の奥底から抉り出したのだった。しかし身体の芯を揺さぶる快感に我を忘れて夢中になった後、沙希子に残ったのは屈辱感だった。
(あの人は私の身体を所有し、蹂躙し、いやらしいものに変えようとしている)
沙希子はタモツの明確な意志を悟った。
(こんなことに半年も耐えられるのだろうか。その前に自分の身体が馴らされ、取り返しのつかないものに変えられてしまうかもしれない)
沙希子はそれが心底、恐ろしかった。
ようやく風呂から出た沙希子は、タオルを巻いたままベッドに座った。ベッドの上にタモツから渡された紙袋の中身を広げると、また涙がこぼれてきた。
「今日は夕方の六時に駅ビル前で待ち合わせだ。その時にこれを着てこい」
そう言って渡された紙袋には、下着が入っていた。しかもそれは男が見て楽しむためのいかがわしい下着だった。
白いパンティは薄いナイロンでできていて、股布には申し訳程度に小さいシルクが縫い付けてあった。
恐る恐る身につけてみると、驚くほど股上が浅く、恥毛をぎりぎり隠すのがやっとだった。もちろんお尻の割れ目がパンティからはみ出してしまう。かといってお尻の上までたくしあげると、今度は股のシルクが沙希子の割れ目に厳しく食い込み、Tバックのように両方のお尻の肉がまるまるはみ出してしまう。しかも両方の股ぐりからは、恥毛に彩られた膨らみの肉がはみ出てしまうのだ。
沙希子は恥毛を処理しようかとも考えたが、今夜、その剃り跡をタモツが必ず見ることを思うと、絶対にイヤだった。思っただけで、恥ずかしさに顔が火照ってくるのだった。結局、沙希子は恥毛ぎりぎりまでパンティを下げて、お尻の途中までを覆う履き方で満足するしかなかった。
ブラはパンティとお揃いだった。しかしブラにはカップがなく、その部分に三角形の薄いナイロンの布地がついているだけだった。胸につけると、乳房に沿って包みこむように伸びきったナイロンの布地を通して、乳首が丸見えだった。二つの三角形を繋ぐ紐が、まるで胸の谷間に橋を渡すかのように宙に浮かんでいる。乳房の収まりを整えながら、沙希子は恥ずかしさとみじめさで涙が止まらなかった。
残っているのは、ガーターベルトと黒いストッキングだった。しかもそれを付ける方法を、タモツはこと細かく指示していた。沙希子はストッキングを履き、ガーターベルトを腰に巻きつけると、履いたばかりのパンティをまた脱がなくてはならなかった。
下着を全て着け終わった後、もう沙希子には鏡を見る勇気はなかった。あわててシャツとスカート、ジャケットを身につけて、手早く化粧を済ますと沙希子は部屋を後にした。
昨夜から明け方までの忌まわしい記憶を振り払うかのように、沙希子は仕事に没頭した。しかしトイレの個室の中で、スカートの下に隠した自分のいやらしい姿を目の当たりにした時、涙があふれてきた。沙希子は便座に座り込んで、声を殺して泣いた。
仕事を終え、約束の時間の五分間に、沙希子はタモツに命じられたターミナルビルの前に着いた。
ビルの前に立ちながら、沙希子はドキドキしていた。目の前を通り過ぎる男たちが、沙希子の洋服を透かして、その中を見ているような気がしてならないのだ。ここへ来る途中の電車の中でも、沙希子は男の視線が気になって、ずっとドアにへばりついて来たのだった。こんな気持ちになったのは初めてのことだった。
(子供みたいな顔をしているくせに、スケスケのパンティを履いて、お尻の割れ目を丸出しにしている。ブラもスケスケで乳首がまる見えだ)
道行く男たちが、沙希子にそう語りかけているようで、沙希子は恥ずかしさにいたたまれなかった。沙希子は思わずバッグを前に抱きかかえると、お尻をビルの壁にぴたりと押しつけて、自分の身体を隠すのだった。
横断歩道の向こうから、タモツがニヤニヤしながら歩いて来た。沙希子は泣き出しそうになった。
その日、連れ込まれたのは、クオークというラブホテルだった。昨日の旅館とは違い、モダンな造りで部屋も清潔だった。
しかしそこへ行く道すがら、沙希子は歩きながらタモツに乳房を揉み上げられた。
道行く人々は、タモツと沙希子を、変態をみるような目つきで蔑んだ。二人を指さして何かを噂するカップルもいた。沙希子はパニックになり、大声で泣き出しそうになった。ギリギリのところで我慢して、ようやく部屋に辿り着いた。
その部屋の中で昨日と同じように、タモツは沙希子にいたずらの限りを尽くした。
何度も何度もキスを強要され、沙希子はタモツと舌を吸い合った。口の中に入ってくるタモツの舌をくるむようにして吸い上げる。その時にはタモツの唾液も飲まなければならなかった。タモツの舌が引き抜かれると、それを追いかけてタモツの口の中に自分の舌を入れなければならない。今度は沙希子がタモツに舌を吸われるのだ。その時にはタモツに唾液を飲ませなければならなかった。この行為をタモツが飽きるまで続けるのだ。
こみあげてくる吐き気を我慢しながら舌を吸い合っていると、沙希子は頭の中が痺れてくるのだった。
(もう、どうでもいいから早く終わりたい)
諦めの気持ちが沙希子の中で芽生えてくる。そうなるとまるで自分から望むように、沙希子はタモツの舌を積極的に吸い上げるのだった。
明るい室内で裸に剝かれ、沙希子は身体を隅々まで見られた。乳房や恥毛はもちろん、脇の下や恥毛にかくれた女の子の割れ目まで、タモツは沙希子の身体をしつこく見続けるのだ。足を開いて後ろを向かされるとお尻の割れ目を左右に広げられ、お尻の穴までのぞかれた。タモツは息がかかるほど近づいて、沙希子のお尻の穴にしげしげと見入った。お尻の穴がタモツの息と外気にさらされる異様な感覚の中で、沙希子はあまりの恥ずかしさに気絶しそうになった。
湯船では抱き合って、自分から身体を揺らし、タモツの胸に乳房をこすりつけた。そこでも長いキスを強要された。
そして逆上せてふらふらになると、またしても身体を洗われ、最後に石鹸でぬめった指をお尻の穴に入れられた。
「二十数えるから、それにあわせてオレの指を締めてみろ」
パニックになった沙希子に、タモツは冷酷に命ずるのだった。
「いや。そんなことできません」
「だめだ。出来るまで指は抜かないからな」
「ああ、やめて」
いうことを聞かない沙希子に業を煮やしたタモツは、指をぐりぐりと回転させた。
「ほら、ぐりぐりされる気分はどうだ」
「やめて。やりますから、ぐりぐりしないで」
仕方なく沙希子はタモツの数える声に合わせて、泣きながらお尻の穴を締め続けた。
「よく頑張ったね。この練習は毎回やるから、早く慣れようね」
ようやくお尻から指を外したタモツは、泣きじゃくる沙希子をお姫様ダッコに抱え上げ、そう慰めるのだった。
ベッドに横たえられると、昨晩と同じように左の乳首を存分にいじめられる。左の乳首は昨日よりもさらに敏感になっていて、沙希子は思わず自分の股間に手を伸ばしそうになってしまう。その誘惑に耐えるために、沙希子は手から血の気が引けるほどシーツを固くつかんだ。しかし我慢は限界に近づいてくる。このままではタモツの目の前で、股間の膨らみに手を当てて、揉みこんでしまいそうだった。これまで誰にも知られていない秘密を守るために、沙希子は恥ずかしいお願いをタモツにしなければならなかった。
「沙希子のオマンジュウの中を舐めて下さい」
そして自ら進んで身体を二つ折りにして、沙希子は明るい部屋の中で恥ずかしい部分を丸出しにするのだった。
両方の耳にふくらはぎがくっつくような姿勢に抑え込まれて、沙希子はタモツに舐められる。その時に沙希子は自分のふくらはぎを手で抑えて、タモツが舐めやすくしなければならないのだ。その姿勢をじっくりと目で楽しんでから、タモツは沙希子がパニックになるまで何時間でも舐め続けた。まるでお尻の夢を知っているかのように、沙希子がして欲しいテンポで、タモツは延々と舐め続けてきた。
何度か追い上げられた後、タモツは沙希子の口の中に親指を入れてきた。パニックになっていた沙希子は、タモツの親指を、音を立てて吸い上げた。幼な子のようにタモツの親指を吸いながら、沙希子は追い上げられていった。そして頂点が近づくと、沙希子は苦しくなって首を振り親指を吐き出すと、お腹から絞るように喘ぎ声をあげるのだった。
(いやで、いやでたまらないのに、どうしても恥ずかしい声が出てしまう)
沙希子は泣きながら、意識が飛ぶほどの快感をこれでもか、これでもかと味あわされた。
「お願いだから、オマンジュウの中に入れて下さい」
結局、耐え切れなくなった沙希子はタモツに何度もお願いして、ようやく花びらのなかにタモツを入れてもらうのだった。
そして自分の意志とはかかわりなく、身体を弓なりにそらせてタモツを喰い締め、腰を震わせてしまうのだった。お尻の夢のせいで普通の女の子よりふっくらと盛り上がってしまった自分の恥ずかしい股間をぐりぐりとされながら、沙希子はタモツの放出をどくどくと受け入れるのだった。
タモツの数度の放出が終わると、再び風呂に連れ込まれ、昨夜と同じく身体の柔らかい場所を噛まれた。
沙希子はもうへとへとだった。体力も気力も失せ、抵抗することはもちろん何かを考えることすらできなくなっていた。
風呂から上がると、タモツはバスタオルで沙希子の身体をしつこく拭いた。そしてぐったりとなっている沙希子をベッドの上に横たえると、着せ替え人形を楽しむかのように、沙希子に服を着せていった。
ようやく部屋を出る段になって、ドアの前でタモツは沙希子のスカートを捲り上げた。
「やっぱり帰りはTバックにしよう」
タモツはパンティを思いっきりたくしあげると、お尻の割れ目に食い込ませ、生地を埋め込んでいった。ぷりんとしたお尻の肉が丸見えになった。沙希子はタモツのなすがままだった。
「沙希子のお尻は可愛いな」
むき出しになったお尻の肉に音を立ててキスすると、ようやく満足したタモツはぐったりとした沙希子を部屋から連れ出した。時計の針は夜中の二時を回っていた。
沙希子はタモツに抱きかかえられるようにしてホテルから出ると、タクシーに乗せられ、朦朧としたまま自分の部屋へと戻った。
部屋の玄関に入ってへたりこむ沙希子から、タモツは部屋の鍵を取り上げた。
「お前はスペアキーを使え。明日は会社から真っ直ぐ帰ってこいよ」
そう言い残すと、タモツは部屋に上がることなく帰って行った。
沙希子は這いずるように寝室に行くと、洋服のままベッドに倒れ、泥のように眠った。