20.誕生

しず子の純情

翌年の四月、出産間近になったしず子は初産の大事をとって入院した。早速、お見舞いに来たマサシにカーテンを閉めさせると、しず子はマサシのベルトを外し、ズボンとパンツを一気に下げた。
「しーちゃん、いいですよ。止めて下さいよ」
「だめ、五日毎にするって決めたの。そうしないとマサシも困るでしょ」
あの騒動以来、しず子は仕事のように五日一回、マサシを口で満足させていた。一度決めたことはやり遂げる。しず子は絶対に譲らなかった。
恥ずかしがるマサシをおさえて口に含むと、マサシはいつもより早く、あっという間に果てた。
「なんか妙に興奮しました」
正直なマサシのもの言いに、しず子は大笑いした。
そしてその三日後に、しず子は男の子を出産した。しず子はマサシと相談し、名前を龍之介に決めた。
子供が生まれてみて、しず子は自分の父親が異常な赤ん坊好きであることを初めて知った。父はそれまで足を踏み入れたことのないしず子たちの離れになにかと理由をつけてはやってきては、龍之介を抱き上げるのだった。特に酒を飲みながらリュウを胡坐の上に載せ、あやすのが大好きだった。
「マモルもしず子もお父さんの胡坐の上が大好きだった。ただ、タモツだけは泣いて嫌がったけどね」
しず子の記憶にないそんな母親の思い出話で、父の赤ん坊好きは筋金入りであることが明らかになった。隙を見せるとすぐにリュウを母屋に連れて行ってしまう父と争いながら、結果としてしず子は子育てのストレスを全く感じることがなかった。
リュウが生まれてから、しず子は前にも増して倹約するようになった。
まず、食費については食べ物を母屋からぶんどることで、ほとんどお金をかけなかった。もともと草壁家には魚は売るほどあるし、近隣に住む農家の親戚から、魚貝類と交換で米や野菜はただで手に入る家だった。さらにジュースの類は一切買わずに煮出した麦茶で我慢し、水も極力井戸水を使うという調子で、しず子は徹底的に切りつめた。
唯一の贅沢は、風呂好きのマサシのために、毎日、風呂を沸かすことだけだった。この点に関してもしず子は徹底しており、毎日湯船を磨き上げ、マサシを必ず一番風呂に入れていた。湯船につかって気持ちよさそうにしているマサシの顔を、洗い場にしゃがみ込んで見るのがしず子は大好きだった。
湯船の中で一緒に入っているリュウをあやしながら、マサシはいつもしず子を誘った。
「しーちゃんも一緒に入りましょうよ」
「アタシはいい」
「どうしてですか?」
「恥かしいから、無理なの」
そう言うと、しず子は洗い場から、湯船の中の二人を見つめ続けるのだった。そして湯船のヘリに顔を乗せると目をつぶって、マサシにキスをねだるのだった。
父の育児参加という意外な手助けはあったものの、子育ての合間をぬっての掃除、洗濯、料理などは差ほど苦にならず、体力のあるしず子は時間をもてあますくらいだった。
その一方で、夜の二人は濃密を極めた。
「マサシ、今夜からOKだよ」
四月に出産し梅雨前線の北上と同じ頃に女子に復帰したしず子に、マサシはむしゃぶりついてきた。しず子も久々にマサシを受け入れ、大きな安心感を味わった。その日のために用意してあった三箱のコンドームは、一週間でなくなった。
本心では、しず子はマサシの子供をたくさん産みたかった。しかし、今のしず子はそれを自重しなければならなかった。
(経済的な裏付けをもたないと、もう子供は産めない)
そう確信したしず子は、コンドームの信者になった。二度と失敗しないために、しず子は生理計算を止め、コンドーム派に鞍替えしたのだった。この部分での浪費も、しず子は例外的に見逃すことにしていた。
一方のマサシは母乳にまみれながら、毎晩、しず子の乳房にむしゃぶりついてきた。驚いたことに、マサシは喜んで母乳を飲むのだ。仕方なくしず子は片方をリュウ用、片方をマサシ用に使い分けて、二人の母親をしなければならなかった。
ようやく梅雨が明けた。暑さが日に日にきつくなる中で、しず子は家の中でだけ、履き古したジーンズを短く切ったショートパンツを履くようになった。お風呂から出て食卓に座ったマサシは、そんなしず子が生足で食事の支度をしている後ろ姿を眺めるのが大好きだった。
長くて真っ直ぐな脛、ぷりぷりに張り詰めている太腿の上には、日本人離れしたまるく盛り上がるお尻がのっている。履き古して薄くなったショートパンツの布地がその丸みに張り付き、パンティの形がうっすらと透けていた。さらにTシャツの背中には、ブラも透けて見えるのだった。たまらなくなったマサシはゆっくりと立ち上がると、しず子の背後に回り、まとわりついた。
「だめだよ、マサシ。ご飯の支度してるんだから」
マサシは無言でしず子のウエストに腕をまきつけると、しず子の髪の毛を鼻先でかきわける。そうやって白いうなじを露わにすると、そこに唇をよせるのだった。
「あん、だめ。だめだったら」
そういいながらも、しず子は根負けして、顔をマサシに向ける。唇と唇が求めあって、二人は舌を絡ませ合うのだった。
「うううん」
しず子が甘い声を漏らし出すと、マサシはショートパンツのボタンを外し、ファスナーを下げると手を潜らせる。その手は一気にパンティのゴムを潜り、しず子の女の子の膨らみにぴたりと張り付くのだ。
「だめ、マサシ」
しず子の囁くような声をマサシがわざと無視する。ウエストに回した腕が上に滑り、Tシャツの上からブラのカップを捉える。ぎゅっと乳房を握ると、パンティの中の中指をさらに奥へと忍び込ませるのだった。少し湿った肉襞を優しく擦りあげ続けると、ついに肉襞が左右に分かれ、中指がとろりとしたうるみのなかに沈んでいく。そうなるとしず子の負けだった。
「ああん、もう、だめ。早くベッドに連れて行って」
マサシはしず子を抱え上げると、暗い寝室へとしず子を連れ去るのだった。
ベッドに横たわったしず子の柔らかいお腹の上にマサシが跨る。
「しーちゃんのお尻と生足攻撃には、我慢できませんよ」
しず子がクスリと笑った。マサシは事あるごとにしず子の美脚を褒めていた。そこでしず子は滅多に見せない生足を出して、マサシを挑発していたのだ。その思惑通りの反応を示すマサシに、しず子は内心してやったりだったが、本心を悟られないようにわざとふくれた顔をして言った。
「もう、今日も晩御飯が遅くなっちゃうよ」
その台詞を黙らせるようにマサシが唇をかさねる。実は待ちきれなくなっているしず子はマサシの口の中にすかさず舌を滑り込ませるのだった。そしてマサシの舌を夢中で巻き取ると、強く吸い上げるのだった。
夕食前に一度、夕食が終ってから一度。若い二人はテレビも碌に見ないで愛し合った。
こうして毎晩気のすむまで求め合った後、マサシを胸に抱きしめて眠りにつくことは、しず子にとって格別のものだった。マサシの温もりはしず子に大きな安心感をくれるのだ。リュウへの愛情とは別に、しず子にとってマサシはかけがえのない存在なのだ。
瞬く間に一年が過ぎて行った。次の年の四月、リュウの一歳の誕生日の日に、しず子は働き出すことを宣言した。
「明日から、お母さんの工場で働くことにした」
そう言いだしたしず子に、マサシは心配そうな顔をした。
「リュウはどこに預けるのですか?」
「工場に連れて行く」
「大丈夫ですか?」
「まかしといて。マサシは心配しなくていいよ」
母の勤める鮮魚の加工工場は、近隣の主婦たちが主役だった。しかもその中で古参である母たちのグループが牛耳っているのだった。しず子が勤めを決めたことで、そのグループが団結した。休憩時間をずらし、彼女たちが交互でリュウの世話をしてくれることになったのだ。社長や工場長の意向など論外で、そう決まったものはそうなるのだった。
子育てのベテランであるおばちゃん連中は、みんなリュウを可愛がってくれた。しず子はそうした付き合いを通じて、子育ての具体的なノウハウを教えて貰った。
こうして職を得たしず子は、心に決めていた計画を実行することにした。
しず子の思い描く人生の目的は三つだった。
まずひとつは、子供の将来に関するものだった。子供が自立するまで好きな道を選べるように、そのためのお金を確保しておく必要があると、しず子は考えていた。
(もし勉強が好きで東京の大学に行くようになっても、その時に困らないようにお金はちゃんと貯めておく)
しず子はそう考えていたのだ。
二つ目は家の建て替えだった。いつか家を建て替え、しず子はマサシの父親を呼び寄せて一緒に暮らすつもりだった。リュウが生まれてから、しず子はマサシに頼んで、一家で内村の家に泊まりに行くようになった。それ以外にも、保存のきく料理や獲れたての魚を届けるなど、しず子はマサシの父親の面倒をみるようになっていた。
「しず子さん、いつも悪いね。マサシは本当にいいお嫁さんを貰った」
マサシの父は、その度に涙目でお礼を言うのだった。小さい頃から、人に喜ばれることはしず子の喜びであった。気のきいた冗談やおあいそを言えないしず子は、ぶっきらぼうに食材の入ったお鍋を置いて帰るだけなのだが、マサシの父親はその真意を感じていた。そうやって内村の家を訪問した後、しず子は玄関を出ると急に笑顔になって、一人でにこにこしながら自転車で帰るのだった。
そして三つ目の目的、それを実現するためにしず子は行動を開始した。
六月のある朝、いつものように朝食を終えたマサシの目の前に、しず子はドカリと本を山積みにした。それはしず子が後輩のネットワークを使って集めた高校の教科書だった。
「マサシ、今日からマサシは勉強して、高校卒業の資格をとって」
そう言いだしたしず子に、マサシが驚いた。
「調べたんだけど、試験を通れば高校の卒業資格が貰えるんだって」
「ああ、大検ですね」
「そう、マサシはそれを受けるの。願書も貰ってあるからね」
そう言って、しず子は高卒認定試験の願書を取り出した。
「いいですけど、どうしてですか?」
「マサシは試験を通って、大学へ行くの」
「また、その話ですか」
マサシが表情を曇らせた。
「勘違いしないでよ。ここから出て行けっていう話じゃないよ。そうじゃなくて真面目に聞くけど、マサシは今の仕事で頭になれるの?」
いきなりの質問に、マサシが口ごもった。
「マサシには無理だよ」
しず子は断言した。
肉体労働者として、マサシはようやく独り立ちしていた。日々の作業で身体が鍛えられ、現場に迷惑をかけない働きが出来るようになったのだ。しかも無口で、誰にも逆らわないマサシは、現場のみんなに可愛がられていた。
「でも、それを続けても頭にはなれないよ。大勢の気の荒い連中を口八丁で束ねるなんて、マサシには無理だ。だからマサシはマサシが得意な分野で頑張らなくちゃダメだよ」
しず子の言うことはもっともだった。
「マサシはお婆ちゃんから、良い頭を貰ったんだから、それを活かさないとお婆ちゃんに申し訳ないでしょ。だから大学に行って欲しいの」
「生活はどうなるんですか?」
「もちろん東京の大学はダメだよ。アタシとマサシは一生くっついていくんだから。でも地元の国立大学なら、ここから通えるでしょ。勉強の合間にアルバイトしてくれれば、あとはアタシが何とかする。だから二人で頑張ろうよ。マサシと一緒なら、アタシたちなら絶対に出来るって」
そう言われてマサシは納得した。
「わかりました。やってみます」
「じゃあ最初は大検ね。試験終わるまで、エッチはなしだからね」
「ええっ」
そう宣言されてしまったマサシは、それから勉強に精を出した。もともと賢いマサシは、勉強は苦ではなかった。現場に教科書を持って行き、休憩時間にも勉強したマサシは、その年の八月に、みごと試験に合格した。
合格発表の夜、しず子はリュウを母屋にお泊り出張させた。あの大晦日の日以来、二人は久しぶりに一緒にお風呂に入った。
「今日は一緒に入るよ」
そう宣言したしず子に、マサシは大喜びした。
「しーちゃん、早く入りましょうよ」
「先に入ってて。後からいくから」
「だめです」
マサシはいつになく強気でしず子の手を取ると、脱衣所まで引っ張っていた。
「マサシ、ダメだってば」
しず子は顔を赤らめて抵抗したが、渋々脱衣所まで連れてこられてしまった。マサシはしず子の目の前で、一気に服を脱いだ。
「早く、しーちゃんも脱いで下さい。下着姿を見せて下さいよ」
「ええっ」
マサシのとんでもないリクエストに、しず子は驚いた。これまでしず子は、下着姿をマサシに見せたことはなかったのだ。寝室で抱き合う時に、薄暗闇の中でパンティを脱がしてもらうのがせいぜいで、それ以上は絶対に無理だったし、ましてや明るい脱衣室の中でマサシに下着姿を見せるなんて、しず子には考えられなかった。
「やだ。恥ずかしいから、絶対にいや」
「ダメです。今日は合格のお祝いです。特別な夜なんですから」
マサシはそう言うと、しず子のTシャツの裾に手をかけて、強引に捲り上げようとした。
「だめ、服が破れるったら…」
Tシャツを脱がされまいと、しず子は必死になって抵抗した。そのしず子の意表をついて、マサシが素早くしゃがみ込んだ。そしてショートパンツのボタンをもぐように外すと、体重をかけて引き下げた。ファスナーが左右に割れ、ジーンズのショートパンツが足首まで落ちた。
「やだぁ」
しず子は慌ててしゃがみ込もうとしたが、マサシが太腿にしがみついたので動きがとれなくなってしまった。
「しーちゃんのパンツ、かわいいです」
そう言うと、マサシはパンティが包みこんでいる膨らみに唇を当てた。
「もう、マサシ。ヒドいよ。強引すぎるよ」
そう言いながら、しず子は自分の股間に張り着いているマサシの頭の後ろに手を伸ばすと、髪をやさしく撫でつけるのだった。
とうとう観念したしず子はTシャツも脱がされてしまった。
「もっと、ちゃんと見せて下さい」
その命令口調のいい方に、わざとふくれて見せたしず子は、ブラを隠していた両手を下した。白く真新しいブラが張り付くようにしず子の胸を覆い、大きな乳房が寄せ上げられて、深い谷間を作っていた。下に目を移すと、くびれたウエストの真ん中にお臍が縦に割れ目を刻み、その下にはブラとお揃いの刺繍がついたパンティが食い込んでいた。マサシの視線を感じたしず子は、股間の膨らみを隠そうと、さりげなく足を交差させた。
マサシが目を輝かせた。
「しーちゃん。本当にスタイルがいいですね」
「そうかな?そう言ってくれると嬉しいけどね」
真っ赤になったしず子は、にこりと笑った。
「もう見たから、いいでしょ?」
「ダメです。後ろも見せて下さい」
「ええっ」
「いいじゃないですか。早く、早く」
せかされたしず子はゆっくりと後ろを向いた。実はこの日、しず子は特別な思いで下着を選んでいたのだ。マサシと初めて愛し合った、あの日と同じ下着を着けていたのだった。
その日の昼間、大事にしまってあったあの下着を手に取ると、しず子は浴室で着てみた。妊娠と出産を経たしず子は、自分の身体の変化に驚いた。ウエストのサイズは変わらないのに、ブラが少しきつくなっていたし、お尻も大きくなっていた。その分、ブラからはみ出て盛り上がる乳房の膨らみが増し、パンティもお尻に食い込んできた。
(少しきつくなったけど、かえってセクシーでいいかも)
しず子は鏡の中の自分に微笑んだ。
(でもマサシに見せるのは、恥ずかしすぎてやっぱり無理だ)
首をひねって後ろ姿を鏡に見たしず子は、まる見えになっているお尻を確認して、そう思った。ところがそう決めていたはずの下着姿を、しず子はとうとう見られてしまった。しかもマサシは後ろを向けと言う。
(後ろを向くと、お尻がまる見えなんだけど…)
しず子はドキドキしながら、マサシに後ろ姿を見せた。
マサシがため息を飲んだ。薄いレースがまるく飛び出したお尻を包んでいる。レース越しにお尻の割れ目がまる見えになっていた。
「しーちゃん、凄いです。もう我慢できません」
そういうと、マサシはしず子に抱きついた。薄いレース越しに、固くなったマサシのものがお尻の割れ目にはさまるように押し付けられた。
腰に巻き付いたマサシの腕を緩めると、しず子はマサシの方に向き直った。
「マサシ。これ、あの大晦日の夜と同じ下着なんだよ」
「そうなんですか」
「うん。あの日、本当はマサシに見せようと思ってたんだけど、やっぱり恥ずかしくなってやめたの」
「もったいないじゃないですか。見せて下さいよ」
「だから今、見せてるでしょ。どう?」
「はい、ありがとうございます」
「そうじゃなくて感想を言ってよ」
「凄いです」
「マサシの好きなグラビア・アイドルの方が凄いんじゃないの」
しず子が意地悪く言った。
「そんなの、全然しーちゃんの方がいいですよ。比べ物になりませんよ」
「ホントかな?」
「ホントですよ」
むきになって言うマサシに、しず子が笑った。
「じゃあ、アタシはマサシのアイドルだね」
「そうです。しーちゃんはボクのアイドルです」
しず子は嬉しくなってマサシに抱きついた。
(しーちゃんはボクのアイドルです)
その言葉が何度も頭の中に響いた。
(アタシはマサシのアイドルになったんだ)
忘れていたアイドルになる夢が、突然叶った。しず子は飛び上がりたいくらいに嬉しかった。
「しーちゃんは動かないでください。今日はボクが脱がしますから」
そう高らかに宣言したマサシが、しず子の背中に手を回すとブラを外した。両肩からストラップを抜くと、ツンと上を向いた大きな乳房が現われた。抜けるように白い乳房の真ん中に、桜色の乳首が立ち上がっている。マサシの容赦ない視線に、しず子は恥ずかしくて気絶しそうなくらいドキドキした。マサシは挑むように突き出ている乳首に軽くキスをした。
(あん…)
しず子が出かかった声を飲んだ。マサシは跪くと、パンティに手をかけた。ゆっくりと引き下ろし、しず子を促して足首から抜き取り、お臍にキスをした。しず子がびくっと身体を震わせた。
「しーちゃん、愛してますよ」
マサシはそう言って立ち上がるとしず子の手をとり、浴室に連れて行った。
あの日と同じように二人は裸で抱き合ってシャワーを浴びた。
いつのまにかマサシはしず子と背の高さが同じになっていた。毎日の仕事で蓄えられた筋肉が、マサシの身体を分厚く覆っていた。その厚い胸板にしず子は乳房を押し当て、マサシに思いっきりしがみついた。一方、しず子の身体は出産を経て、ますます女らしくなっていた。若く張りのある身体はそのままに、くびれたウエストの下にあるお尻はさらに柔らかみを帯び、乳房も釣鐘型に大きく張り出していた。マサシはたまらなくなって、しず子を思い切り抱きしめた。
「マサシ、大好き。愛してるよ」
「ボクもです。愛してます」
相変わらずしず子の言うことをなぞるだけで、マサシの言葉はぎこちなかったが、それでもしず子はマサシに愛されていることを確信していた。
マサシが腰を落とし、しず子の乳房にむしゃぶりついていきた。左の乳房を存分にこねあげながら、マサシは右の乳房にとりつき、乳首を含んで舌で舐めまわした。
「ああ、マサシ。いつもみたいに、ぎゅっとして」
しず子が喜ぶことを知っているマサシは、両手で乳房をつかむと力を入れて絞り上げた。
「ああ、いい。マサシ、気持ちがいい」
マサシの指の隙間から乳首が絞り出された。固くしこった乳首が乳輪と一緒に一段と膨らみを増した。マサシはそれを口に含むと、甘噛みした。
「好きよ、マサシ。キスマーク、いっぱいつけて」
そう言ったしず子があえぎ始めた。
「あん、あああん…」
「しーちゃん、もう我慢できません」
そう言うとマサシが、しず子の後ろ側に回った。しず子はマサシの動きに驚いた。
「なに?」
「しーちゃん、壁に手をついて下さい」
「だめだよ、ここじゃ恥ずかしいよ」
マサシの企みを知ったしず子は、恥ずかしさに思わず身体を小さくかがめようとした。マサシはしず子のウエストにがっちりと腕を回し、しゃがみこもうとする動きを封じた。そして残った手をしず子の太腿の間に強引に割り込ませた。中指を花びらに這わせ、ゆっくりとなぞる。何度も繰り返すうちにとうとう肉襞が割れ、指先がとろりとした感覚を捉えた。
「マサシ、ダメ。明るすぎて恥ずかしい。無理だってば…」
「大丈夫ですよ。しーちゃん、誰も見てませんから」
ついに観念したしず子は壁に両手をつくと、両足を開いてお尻を突き出した。弓なりにそった背中のさきにある真っ白で柔らかいお尻が割れて、その奥に潤った女の唇が見えた。マサシはそこにあてがうと、思いっきり突き進んだ。花びらが左右に割れ、マサシをつるりと呑み込んだ。
「ああ、マサシ。凄い。おかしくなっちゃう」
風呂場にぱんぱんとお尻を叩く音を響かせて、マサシはしず子を激しく突きまくった。さらにしず子の背中に身体をくっつけると、マサシは両方の乳房に手を伸ばした。大きな円錐型に膨らんだ乳房を手の中にすくい取り、力を入れて揉みしごく。マサシの握力を弾き返すように、しず子の乳房が張り詰めてきた。もげそうなくらい固くなった乳首を指先で挟みひねられて、しず子はしびれるような感覚に腰を震わせた。
「マサシ、もうダメ。へんになっちゃう。立ってらんないよ…ああ、早くちょうだい」
極まって腰を震わせ続けるしず子の中に、マサシは全てをとき放った。
そのまま崩れるように湯船につかった二人は、湯船の中で再び抱き合った。お湯の中に身体が隠れたことで大胆になったしず子は、大きく太腿を開くとマサシの太腿の上に跨った。マサシにくっつきたくて我慢できなかったのだ。二人の間に、お湯の中に解放された乳房がまるまると顔を見せた。マサシは乳房の下から両手をあてがうと、大きな膨らみをやんわりと包んだ。
しず子は恥ずかしさに顔を真っ赤に染めて、言った。
「スゴ過ぎるよ、マサシ。恥かしくて死ぬかと思った」
「怒りましたか?」
マサシが心配そうな顔をした。
「ううん、怒ってない。凄くよかった。…またしてね」
「はい、毎日しましょう」
「バカ」
しず子はマサシの胴体に足を巻き付けて、胸板に乳房を押しつけた。そして首に腕をからませると、何度もキスをした。お互いの唇と舌を求めあう音が、くちゅくちゅと浴室に響いた。当初、女の子の身体について全く無知だったマサシを、しず子はやさしくリードすることで、二人の夜の生活はしず子が主導権を握っていた。しかし最近では、主導権はじょじょにマサシに移っていたのだった。思い出すだけで恥かしくて顔が赤くなってしまうようなことを言わされたり、マサシの求めに応じて刺激的な体位をとらされたりすることで、しず子はマサシに征服される喜びを開発された。マサシに完全に身体を委ねることが、しず子に大きな安心感と快感をもたらすのだった。
「ねぇ、マサシはこんなアタシのどこが好きなの?」
しず子はマサシの鼻に鼻先をくっつけると、おでこどうしをぴたりと当てて甘えて言った。
「全部です」
マサシが微笑みながら答えた。
「だめ。そんな答えじゃだめだよ。ちゃんと考えて答えるの」
「そうですね…」
「オッパイが好きとかもダメだからね」
「ええっ、どうしてですか?」
「だってオッパイの大きい女の子なんて幾らでもいるでしょ。そうじゃなくて、アタシだけのいいとこを言ってよ」
「ボクが一番好きなのは、しーちゃんの笑顔です」
「ええっ?」
マサシが身体や性格のことを言い出すと思い、その答えに言い返してからかってやろうと企んでいたしず子は、意外にもマサシが顔のことを言ったので驚いた。
「しーちゃんはあんまり笑わないけど、笑った時の笑顔が凄く可愛いです。ボクはそれが好きなんです」
「そうだったの。もっと早く言ってよ。これから一杯笑うからね」
しず子は嬉しくて、マサシの鼻先をぺろりと舐めた。そして顔にキスの雨を降らせると、満面の笑顔をマサシに見せた。その晩、二人は夜中まで風呂場から出なかった。

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