2.強制結婚

からめとられた百合花

老人は二人組の男たちを一喝した。
「わしは剛田実業の剛田達吉だ。お前たちもその筋なら、剛田の名前くらい知っているだろ」
剛田実業という名前を聞いて、男たちは顔色をかえ、二人とも慌てて百合花から手を離した。
「わしは昔、松崎さんにお世話になったことがあってね。大切な恩人なんだよ。彼の後始末は私がつけるから、二度とここへは来るな。お嬢さんにも手出しをするな。言うことをきけば、お前たちも悪いようにはしないから。わかったな」
貫禄が違う剛田にそう凄まれた二人組は、そそくさと部屋を出ていった。
「ありがとうございます」
涙をぬぐいながら百合花が礼を言った。
「それよりお嬢さん、先ずはお父さんの病院をかえないと、あんな貧相な救急病院ではダメだ。最高の治療が受けられる病院を探すから、全てわしに任せてくれないかね」
そう言われて、百合花は黙ってうなずくしかなかった。

剛田が手配した救急車で、百合花は父と一緒に都内の有名病院に移動した。そこはさっきまでいた病室とはうってかわって、清潔で豪華な個室だった。真新しいベッドで相変わらず眠り続けている父を見て、百合花は安堵のため息をついた。
「さて、次は家の始末だな」
そう促されて剛田とともに百合花が家に戻ると、そこには既に引っ越し業者が来ていた。
「残念ながらこの家はとられてしまうので、荷物はさっさと整理しなければならない。早い話が夜逃げだな。手っ取り早く家財は貸し倉庫に運んでおこう。でも君には新しい部屋を用意したので、君の荷物はそこに運ぶ手はずになっているよ」
剛田が言う通り、引っ越し業者は百合花の部屋で荷造りを始めた。あまりの手回しの良さに、あっけにとられている百合花の目の前で、部屋の荷物はどんどん片付けられ、トラックに積み込まれてしまった。
「それじゃ、新しいマンションの鍵を渡すから、そこに行って自分の荷物を片づけたらいい」
剛田はそういうとマンションの鍵と地図を百合花に渡し、百合花を家に残して出ていった。

教えられたマンションは、父が転院した病院のすぐそばだった。間取りは1LDKで、すでにクローゼットやテーブルなど、新しい家具が用意されていた。広いリビングの奥に続く寝室には、なぜかダブルベッドが置いてあった。
引っ越し業者が荷をほどくと、あっという間に片づけが終わってしまった。業者が帰ってしばらくすると、インターフォンが鳴った。剛田であった。余裕の笑みを浮かべて、剛田が部屋に入ってきた。
「何から何までお世話になって、申し訳ありません」
百合花は心からお礼を言った。
「何も気にしなくていい」
「どうやってお礼をしたらいいか…」
「お礼なんかいらないよ。なぜなら君は、私の妻になるんだからね」
「ええっ」
突然の剛田の申し出に、百合花は驚いた。
「確かに君のお父さんには昔お世話になった。だから事業と財産を整理して、残った負債の5億円はわしが用立てよう。さらに病院の費用だが、あそこは毎月約百万円の医療費がかかるんだが、お父さんの命には代えられないので、それもわしが負担しよう。そしてこの部屋の家具や家賃や諸々の経費もわしが払う。と、ここまでがお父さんに対するわしの恩返しだ」
そういって剛田が射すくめるようなまなざしで、百合花をとらえた。
「これに対して、君にできることはなんだい?」
「…」
百合花は言葉に詰まった。
「君もお父さんには、今まで何不自由なく育ててもらってきた恩があるよ」
「は、はい」
百合花はうなずくしかなかった。
「再婚もせずに、君の幸せだけを考えてきた父親が倒れたら、あとは知りませんではすまないだろ。君もそれなりの代償を払わなければ、世間が許さないぞ。しかもお父さんはいつか目覚めるかもしれないと信じるなら、あの高度な医療が受けられる病室に、寝かせておいてやりたいと思わないのかね」
「それは…思います」
「私が助けなければ、お父さんはオンボロ病院に逆戻りのあげく野垂れ死にするかもしれない。お前は風俗店に売り飛ばされて、ヤクザに監視されながら無理やり売春させられるんだぞ。そんな生活がしたいのか?」
「いやです」
「なら、お前の進む道は決まっている。わしに嫁いで、嫁として誠心誠意わしに尽くすのが、お前の勤めだよ」
そう詰め寄られた百合花には逃げ場がなかった。ともかく剛田は百合花に考える隙を与えないのだ。そして手回しよくテーブルの上に広げられた婚姻届けに、百合花は泣く泣くサインをさせられるのだった。
「いつまでも泣いていないで、涙を拭きなさい。今夜はお祝いだ。わしはこれから仕事を済ませてくるから、ホテルで待ち合わせをするとしよう」
そういって玄関にいきかけた剛田だったが、踵を返すといきなり百合花に近づいてきた。本能的に後ずさった百合花は、あっという間に壁際に追い詰められてしまった。ぎりぎりまで剛田の顔が近づいてきた。そして両手で百合花の頬を挟み込むと、いきなり唇をおしあててくるのだった。
「むぅぅぅ」
動きを封じられた百合花は、うめきながら剛田の強引な口づけを受け入れるしかなかった。唯一できる抵抗として真一文字に唇を閉じて、なんとかこの拷問のようなキスに耐えようとするのだった。そんな百合花の反抗的な態度にじれた剛田が、百合花の鼻をつまんできた。
「ふうっ」
息が詰まった百合花が、とうとう唇を開いた。その瞬間に剛田は百合花の下唇を吸い上げると自分の口の中に吸い込んで、じゅるじゅると音を立てて吸い回した。
(いや、いやです。やめてください)
百合花はなんとか剛田の唇から逃れようともがいた。しかし剛田は片手で頬をつかみ、顔を動けなくすると、すさまじい握力をかけ、百合花の口を強引に割り開くのだった。
「あぅぅ…」
ついに百合花の口の中に、剛田の舌がぬるりと進入してきた。老人特有の口臭が口中に広がって、百合花は吐きそうになった。
(いやだ、やめて、やめて)
しかし攻撃の手を緩めない剛田は、百合花の舌を巧みにからめとり、とうとう自分の口の中へと吸い上げてしまうのだった。
「はぅぅん」
舌を思い切り吸い上げられて、百合花がうめいた。もう百合花に抵抗する気力はなかった。こうして剛田は思うままに、百合花の口を犯し続けた。剛田の唾液で口の周りをびしょびしょにさせながら、百合花は自らの舌を剛田に差し出すのだった。
「ボヤボヤするな。お前もわしの舌を吸うんだよ。ほら、早くやれ」
そう命じられた百合花はぎゅっと目をつぶると、口の中にうごめいている剛田の舌をゆっくりと吸い上げた。
「うーん。お前のキスは思った通り優しくて気持ちがいいな。もっといっぱい吸っておくれ」
そういって剛田は百合花に舌を吸わせながら、今度はニットのまるまるとした胸の膨らみに手をかぶせるのだった。そしてぐりぐりと膨らみをこねる様に揉むと、剛田は親指と人差し指で胸の先っぽをつまみあげた。
「ひぃぃぃ」
百合花が痛みにうめいた。それを無視して、剛田はつまんだ胸の膨らみを思いっきり前に引っ張るのだった。
「い、痛い。やめてください」
百合花の顔が苦痛に歪んだ。ぐっと引っ張られた膨らみの先っぽがプルンと手から滑ってもとの形に戻った。
「ぷりぷりして活きがいいオッパイだなぁ」
にやりと笑った剛田は再び先っぽをつまみ、乳房が指先から逃げるまで引っ張るという仕草を、飽きるまで繰り返した。
「たまらない女だな」
とうとう剛田がニットを剥がすように脱がした。その下は予想通り白いブラジャーだけだった。
「きれいな体をしているな。オッパイもぷりぷりだ」
剛田はわざとブラジャーを外さずに、カップの上に盛り上がっている百合花の上乳を甘噛みして、歯跡をつけるのだった。
「そんなことしないで…、ああ、もう、やめてください」
百合花の懇願を無視して、剛田はキスマークをつけ続けた。そして手を下にまわすと、百合花のパンツのウエストのボタンをはずし、ジッパーを素早く下げた。そして一気にパンツを引き下げる。そこには予想通り、白いパンティが現れた。
「いやあ、見ないで」
「ダメだよ。よく見せるんだ」
恥ずかしさに屈もうとする百合花を押さえつけて、剛田は百合花の下半身にじっくりと目を移した。所々にレースの花があしらってある大人しめのパンティが、柔らかい下腹のまるみに張り付いていた。
「お前はスタイルがいいね。今度、お前に似合うビキニの水着を買ってあげるから、わしの目を楽しませておくれ」
そう命じると剛田はひざまずき、百合花のパンティの三角地帯にやさしく口づけた。
「やめてぇぇぇ」
大声で叫ぶ百合花に、剛田は今すぐ素っ裸にひん剥いて犯したい衝動にかられたが、ぎりぎりのところでそれに堪えた。
「新しい服と新しい靴、そして新しい下着を買って、それを身につけて、この部屋で待っていなさい。6時に迎えに来るからね。逃げようなんて思うんじゃないよ。さっきのヤクザどもは、まだ諦めてないから、お前のことを見張ってるぞ。わしの手を離れ、今度奴らに捕まったら、地獄の売春宿行きだからな」
剛田は百合花にそう言いきかせると、部屋を出ていった。

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