15.初体験

しず子の純情

しず子はマサシと大晦日まで会わない約束をした。その間にマサシが冷静になって、もし断ってきたとしても、それはそれでよかった。むしろマサシに、冷静になって考えて欲しかったのだ。良く考えた上で、確信を持って約束の場所に来て欲しかったのだ。
とはいうものの、実はしず子は会わない約束をしたことを後悔していた。
(こんなに辛いとは思わなかった。マサシに会いたい。声が聞きたいよ)
しず子は何か他のことを考えないと、気が狂いそうだった。そこで大晦日の準備に没頭することにした。
まずしず子は大晦日の二人の夜のために、県庁の近くにあるビジネスホテルを予約した。しず子たちが住む町からそのホテルまでは、電車で三十分くらいの距離だった。男と行くホテルを予約するなど朝飯前の友達や後輩が一杯いたが、しず子は誰にも知られたくなかったので、恐る恐る自分で予約した。部屋のタイプを聞かれてダブルと言った時に、しず子は受話器を握りしめながら真っ赤になった。
次は着て行く服だった。あの夏以来、しず子は一年中ジャージとTシャツで過ごしていた。季節によって、夏になればジャージの上を脱いで中が透けない黒のTシャツになり、冬はジャージの上に職人が着るようなボア付の紺色のジャンパーをはおるという具合だった。それはしず子たちの定番の服装でもあった。
(まさかこんな恰好じゃ行けないよな)
そこでしず子は洋服を買いに行くことにした。
あの夏に水着を買って以来、久しぶりに駅ビルのショッピング・モールに足を踏み入れたしず子は、洋服を物色し始めた。もっともスカートは絶対に履く気がなかったので、最初に買ったのはジーンズだった。
「あれ?裾を上げなくても大丈夫そうですね。お客さん、足が長いですね」
試着室から出てきたしず子を見て、店員が驚いた。店員の言う通り、プリンと上を向いたお尻と長い足にぴったりと張り付いたジーンズが、しず子のスタイルの良さをいっそう引き立てていた。
しかし気取って試着室から出たものの、しず子は実はとんでもない状況に追い込まれていた。しず子が選んだジーンズはローライズだったので、下に履いている肌色の大きなパンティが、ウエストから飛び出してまる見えになっているのだ。今はTシャツで隠しているからいいものの、本番ではこうはいかない。
(下着もそれ用を買わなくっちゃ)
ジーンズを買ったしず子は、次にランジェリー・ショップに行くことにした。もちろん大晦日のために新しい下着を買うことは、最初から目的のひとつでもあった。
初めて足を踏み入れたランジェリー・ショップは、まばゆい光の中に、色とりどりの下着が並んでいた。売場の中央には、透明なマネキンが薄紫色のレースの下着を身につけて立っている。胸を寄せ上げるように張り付いているブラと、サイドが紐のように細いパンティのセットだ。紫のレースの所々に黒っぽい刺繍が縫い込んであり、まさに大人の女を感じさせた。マネキンの体内にはライトが仕込まれていて、レースの透け具合が一目でわかった。
(やだ、まる見えじゃない)
しず子はその大胆なデザインと生地の薄さに驚き、さりげなく見た五万円というプライスカードにもっと驚いた。
(いくらなんでも、これは無理だ。高すぎるし、恥ずかしすぎる)
マネキンから目を離したしず子は、改めて店内を見渡した。壁一面にブラとパンティがセットになっているハンガーが、一分の隙間もなく掛けられている。暇そうな女の店員がしず子に話しかけたそうな顔で微笑んだが、しず子は睨みかえして、無視することにした。
壁際に行き、下着を手に取って見る。今まではスーパーで棚の中に山積みで売っている下着を、主に値段だけで選んでいたしず子は、何を選んでいいのか分からなかった。しかもそれはマサシに見られることも考えなくてはならないのだ。そう考えるだけで、しず子はドキドキして顔が赤くなってきた。
(迷っていてもしょうがないので、まず、色を決めよう)
散々悩んだ挙句、色は白にすることに決めた。次はデザイン選びだ。
(Tバックは恥ずかしすぎて絶対に無理だから、それ以外で探そう)
ようやく思うデザインを手にしたしず子は、サイズ別に三セットを手にすると、試着室に入った。まずブラをつけてみて、ぴったりとフィットしたサイズ表示をみるとFカップだった。
(Eかと思っていたらFかよ。どうりで今まできつかったはずだ)
結局ローライズの白のパンティとお揃いのブラを買うまでに、しず子は二時間もかかった。ようやく買い終えた時には、さすがにぐったりときた。
(女の買い物って大変だな)
萎えそうになる心を奮い立たせて、しず子はジーンズに合うように藍色のセーターと白いダッフル・コートを買った。最後に白地にピンクのラインが入ったスニーカーを買った頃には、ちょうどショッピング・モールも閉店の時間になっていた。
一日の買い物は結構な散財になったが、気にならなかった。しず子は無駄使いを一切しない上に、高校になってからは毎日バイトしていたので、高校生にしてはかなりの貯金を持っていたのだ。生来ケチな性格だったが、マサシのためなら貯金を全額はたいてもいいと思っていたのだ。
しず子は自転車をすっ飛ばして家へと戻り、早速、買ってきた洋服を着てみることにした。まず風呂場に行って下着をつけてみる。白いレースのブラが、しず子の乳房を大胆に寄せ上げ、大きな谷間を作った。
(さすがに高いとつけ心地が違うな)
カップの中の乳房を整えると、しず子は気持ちのいいホールド感にうっとりとなった。次にパンティを履きかえると、しず子は首を曲げて鏡に映る自分の後姿をのぞいた。しず子の選んだパンティは、前側にはかっちりした刺繍がついているが、後ろは透け透けのレースだけだった。お尻の膨らみが始まるギリギリから下を覆うレースのなかに、お尻の割れ目が透けてまる見えだった。
(ちょっと凄すぎない?)
しず子は顔を赤らめた。いつもつけているものより生地が薄く、極端に股上が浅いので、まるで何も履いていないように心もとなかった。
(まあ、すぐに慣れるからいいか)
下着姿で鏡を見ながらあれこれポーズをつけて、しず子は我ながらスタイルがいいと満足した。そしてジーンズとセーターとコートを羽織ると、再び色々なポーズをとってみた。
(結構イケてるんじゃないか?)
しず子は鏡に向ってにんまりと微笑んだ。
残る問題は髪型だった。
半年に一度美容院でパーマをかける以外、しず子は髪の毛をほったらかしにしていた。時折気が向くと薬局で買ったヘアカラーで金髪に染めるので、いつのまにかしず子の髪の毛は金と黒のまだらになっていた。そこでしず子は美容院に行くことにした。
「よかったわ。やっとおしゃれする気になったのね」
美容院のおばちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「ともかくポニーテール以外で、前髪が眉毛を隠すようにして」
「任せなさい」
おばちゃんはしず子の髪に大胆に鋏を入れていった。母親も通っているこの美容院のウリは、店主のおばちゃんが全国カット・コンクールで入賞したことだった。もっともその時に獲得したという棚の上に飾られているトロフィーは今や埃まみれで、受賞の年度の判別もつかないほどだった。しかし具体的な髪形のイメージのないしず子は、おばちゃんの腕に運命を託すしかなかった。
出来上がった髪型は、肩に髪がかかる長めのボブ風で、前髪が瞼のギリギリで一直線に切りそろえられていた。
「どうかしら?」
「コケシみたいで、ちょっと怖くない?」
鏡を見たしず子が文句を言った。
「じゃあ、こうしよう」
おばちゃんは縦に鋏を入れると、前髪の直線と、サイドと前髪の直角を自然な感じで消していった。
「ほら、どうよ。しず子ちゃん、かわいいじゃない。残っている金髪がメッシュっぽくってカッコいいよ」
「そうかな」
あまりに変身した髪型に、しず子はどう言っていいか分からなかった。
(似合ってるかな?マサシが喜ぶかな?かわいいって言ってくれるかな?)
そんな迷いの気配を察したおばちゃんが畳みかけてきた。
「凄く似合ってる。雑誌のモデルさんみたいだよ」
そこまでおだてられて、しず子はやっと納得した。
洗髪とブローを終え、椅子から立ち上がったしず子は、確かに見違えるようだった。
「しず子ちゃんステキよ。あとはそのジャージもやめちゃいなさいよ」
しず子はニヤリと笑って、店を後にした。
大晦日の日、しず子は約束の三十分前に駅の改札に行き、ドキドキしながらマサシが来るのを待った。世の中は大掃除やおせち作りに追われているのか、駅は閑散としていた。
待ちに待った六時の十分前に、向こうからマサシがやって来るのが見えた。しず子はすぐにでも駆け寄りたい気持ちを抑えて、マサシが近づいてくるのを待った。
マサシはいつも通りにジーンズを履き、グレーのダッフル・コートの上に、鞄を斜めがけしていた。
「マサシ、こっち、こっち」
ついにしず子は待ち切れなくなって、手を振った。一瞬怪訝そうな顔をしたマサシが、手を振っているのがしず子だと気づくと、慌てて走り寄って来た。
「すいません。遅れました」
「違うよ、まだ十分前。アタシが早く来たんだよ」
「いつもと服が違うから、分かりませんでした」
(何だよ。服だけかよ。他に言うことないのかよ)
ちょっとふくれたしず子は、ぶっきらぼうにマサシに切符を渡すと、二人で改札をくぐった。
電車はすでにホームに入っていた。ガラガラの車内で、マサシを四人掛けのボックスの窓際に座らせると、しず子はわざとマサシの正面に座った。
「久しぶりだね」
マサシは相変わらず喜ぶ子犬のような顔をして、しず子を見つめ返してきた。
「はい、ちょうど一週間ぶりです」
「なんか変わったことあった?」
「特にありません」
「ふーん。ねぇ、マサシ。アタシ髪の毛切ったんだよ」
「そうですよね。だからさっき分からなかった」
(マサシのために美容院へ行ったし、服も下着も買ったんだよ)
そんなことをひとつも言ってくれないマサシに、しず子はじれったくなった。
「どう、似合ってる?」
「似合ってます。しーちゃん、髪型も洋服もすごく可愛いです」
しず子は飛び上がりたいくらい嬉しかった。
「ホントかよ」
「ホントです。カッコ良すぎて、一緒にいるだけでドキドキします」
(よかった。マサシがそう言ってくれてよかった)
しず子はにやにやすると席を立って、マサシの隣に座った。
発車のベルが鳴り、電車が動き出した。もう誰も車内に入って来る者がないことを確かめると、しず子はマサシの目を見つめて、思い切って言った。
「手をつなごうか?」
「はい」
しず子はマサシの手を握ると、そっとマサシの肩にもたれかかり、目を閉じた。マサシの手はいつも通り柔らかく、温かかった。コートの上から、マサシの二の腕が乳房の横にぴたりとくっついた。しず子はうっとりとして、電車の揺れに身を任せた。
ホテルのロビーのソファでマサシを待たせると、しず子はフロントでチェック・インした。本名と住所を堂々と書いたしず子は、年齢だけは二十二歳にごまかした。そして同泊者の欄には、マサシの名前だけを書き、カッコくくりで弟と書き添えた。ダブルの部屋に弟はないだろうと、フロントの男がニヤリと笑っが、しず子は全く気が付かなかった。料金を払って鍵を貰うと、しず子はマサシのもとへ飛んで戻った。
「マサシ、お腹減ったでしょ。何か食べに行こうよ」
「はい」
二人はホテルを飛び出して、駅前の繁華街に繰り出した。電車の中からずっと手をつないできたので、しず子はホテルを出ると同時に、当たり前のようにマサシの手をとった。しず子は男の子と手をつないで街を歩くのは初めてだった。それだけで嬉しく、気恥ずかしい感じもして、心臓が爆発しそうだった。賑やかな繁華街を歩くうちに、店構えがおしゃれなラーメン屋を見つけた二人は、暖簾をくぐった。
「何でも好きなものを頼んでいいよ」
「ホントですか?」
「うん、お金はあるから、遠慮しないで注文して」
マサシもしず子も食が太いほうだった。二人はそれぞれに大盛りのラーメンをとり、その他に餃子、チャーハン、野菜炒めなどを注文して、分け合って食べた。
食事を終えた二人は手をつないで繁華街をぶらつき、カフェに入ってコーヒーを飲んだ。
店を出た後、ホテルに向う道すがら、わざと暗い路地に入り込んだ二人はキスをした。一週間ぶりのキスは、とてつもなく甘く、しず子は身体が痺れた。
ホテルに戻って来た時には、時計の針は八時を回っていた。二人は無言でロビーを横切ると、エレベーターに乗り込んだ。
(マサシと朝まで一緒だ)
これから待ち受けていることにワクワクしながら、しず子はエレベーターのボタンを押した。
部屋は最上階の一二階だった。ドアを開けると入口の天井にある小さな電球が点灯した。そのまま薄暗い室内に入って行くと、まるで宝石をばらまいたように、窓の外に夜景が広がっていた。
「凄い。綺麗だね」
しず子はマサシを窓際まで引っ張って行った。そして二人で並んで、窓ガラスにおでこをつけて夜景を眺めた。
県庁やその周りの大きなビルの窓にはところどころに明かりが灯っていて、それは大きなクリスマス・ツリーのようだった。眼下に広がる道路は車のヘッドライトとテールライトが帯となり、まるで光の川のようだった。
「夢みたいです」
マサシがぽつりといった。
「綺麗だから、このまま部屋の灯りをつけないで、カーテンを開けておこうか?」
「はい」
「マサシ、コート脱げよ」
しず子は窓から離れてコートを脱ぐと、椅子の上に置いた。マサシもそれに倣うかのようにコートを脱いだ。そして二人でベッドに並んで座ると、再び窓の外を眺めた。
しず子は無言でマサシの手をとると、自分の肩に回した。マサシがやさしくしず子の肩を抱きしめてきた。しず子はマサシの肩に、頬をぴたりとつけて寄り添った。心臓がドキドキした。息をするたびに、セーターを押し上げている乳房が大きく波打つのが自分でも分かった。しず子はこの先、どう進めていいか分からずにしばらく外を眺めていた。
(早くしないと時間がもったいない)
しず子は覚悟を決めた。
「アタシも脱ぐから、マサシも裸になっちゃえよ」
突然、しず子は明るくそう言ってベッドから立ち上がると、マサシを残して部屋の入口の方へ歩いた。
部屋のドアの前のマサシから死角になる場所で、しず子は洋服を脱いだ。ジーンズのファスナーを下す手が震えるのが、自分でも分かった。
(下着はどうしよう。脱いだ方がいいのかな?)
しず子は迷った。真新しいブラとお揃いのパンティは、マサシのために買ったものだ。悩みに悩んで、苦労して買ったのだから、マサシに見てもらいたい気もする。そう思う反面、下着姿を見られるのが死ぬほど恥ずかしくもあった。
(ベッドの中で脱いだとして、明日の朝起きた時に、ブラやパンツが床に落ちていたらどうしよう。マサシに見られたら恥ずかし過ぎるよな)
そう思ったしず子は、結局、全部脱ぐことにした。思い切って下着を脱ぎ終わると、しず子はちょうど目の前にあったクローゼットを開けて服を入れ、その下に下着を隠した。
クローゼットの向いにあるバスルームのドアを恐る恐る開けると、バスルームのなかは照明がともっていた。なかに入ると、大きな鏡の中に全裸の自分が写り込んだ。鏡の中のしず子は、お酒を飲んだように顔が真っ赤に火照っていた。
しず子はシャワー栓をひねると、備え付けてあるボディ・ソープを手にした。腋の下、乳房、そして太腿の合わせ目に泡を塗り着け、丁寧に洗った。心臓がドキドキし、すでに乳首がこりこりに固くなっているのが分かった。手早く泡を流すと、しず子は急いで身体を拭き、そのままバスタオルを身体に巻きつけて、バスルームを後にした。
薄暗闇の部屋に戻ると、マサシはすでにベッドの中に入っていた。
「あっ、一人だけ先に寝たら、ズルいよ」
わざと明るくそう言ったしず子はベッドに駆け寄ると、毛布の中のマサシの横にすべりこんだ。そこには裸になったマサシの熱い身体があった。
毛布の中でしず子は巻きつけていたバスタオルを外すと、マサシに抱きついた。マサシの熱い体温を直接肌に感じられるのが嬉しかった。しず子は横向きのまま、マサシの首に腕を巻きつけて、マサシを抱き寄せた。それに応えるかのように、マサシの腕がしず子の背中に回った。お互いが力を入れて抱きしめ合うと、身体が一分の隙もなく密着した。マサシの胸に、しず子の乳房が押しつけられて、形を変えて広がった。しず子の冷たい身体が、マサシの体温で温められて、肉がほぐれていった。
「ねぇ、マサシ。キスして」
二人は貪るように熱いキスを交わした。しず子はマサシに抱きついたまま寝がえりをうって仰向けになり、マサシを自分の身体の上に乗せ上げた。そして足を広げて外側からマサシの足を巻き取り、背中に回っているマサシの手をつかむと、乳房におしつけた。マサシの手が両の乳房を包みこみ、優しく揉みあげてきた。
しず子はマサシの髪の毛をもしゃもしゃさせながら、耳たぶを甘噛みした。それを倣うようにマサシの唇がしず子の耳を捉え、舐め上げてきた。
「…ああん」
しず子は思わず甘え声を出した。
「ねぇ、マサシ、しーちゃんって呼んで」
マサシは乳房を優しく揉み上げながら、耳に唇を当てると「しーちゃん、しーちゃん」と囁くように言い続けた。その声が、しず子を身体の芯から痺れさせた。耳に当たる柔らかい唇の感触が、さらにしず子の心をかきたてた。乳房の先が痛いほど固くなってきた。
「はあああん、はあああん」
しず子は堪らず声を漏らした。自分でも驚くような甘え声だった。
(ああ、恥ずかしい。変な声がでちゃう)
しず子は真っ赤になった顔をマサシの顔の下に再び潜り込ませて、キスをねだった。
「マサシ、キスしたい。お願い、キスして」
マサシがしず子の唇をとらえ、舌先をからめとると、やんわりと吸い上げてきた。
「ねぇ、もっと胸を強くして。強く握って」
「はい」
マサシが両方の乳房を思い切り握りしめてきた。痛みに、しず子の顔が歪んだ。
「痛いですか。ごめんなさい」
マサシが慌てて力を緩めた。
「大丈夫。大丈夫だから強くして」
マサシが再び力を入れて乳房を握ってきた。痛みの中に、キュンとなる切ない感覚が走った。
「痛いけど、いい。気持ちがいいの」
そう言われたマサシは、力を込めて乳房を揉み上げた。しず子は眉間に皺をよせながら、喜びの声をあげた。
「ああん、ああん。マサシ、この前みたいにオッパイにキスマークをつけて」
マサシが片方の乳房を揉み上げながら、もう片方にむしゃぶりついていきた。そして乳首を吸い上げると、甘噛みしてきた。両方の乳首を交互に甘噛みされながら、しず子は夢心地になってきた。
「ああん、ああん…」
喜ぶしず子の様子に、マサシが乳房の膨らみのあちらこちらに吸いつき、噛み跡を付けていった。噛まれる度に、しず子は甘え声をあげた。大きく開いている太腿の奥が、すでに濡れているのが分かった。
しず子は密着している下腹の間に手を差し込むと、マサシを探り当てた。それは固く、熱く脈打っていた。しず子はそれを優しく握ると身体をせりあげた。そして太腿の間で自由になったそれを自分の中心にあてがった。
「マサシ、まっすぐ上に動いて」
「は、はい」
マサシがゆっくりとせり上がってきた。先端が花びらをかきわけて、ゆっくりと入って来た。
(いい。マサシ、いいよ。もっと奥までちょうだい)
一番太い部分が花びらを通過すると、そこからは一気だった。しず子はつるりとマサシを咥えこんだ。
「マサシ、アタシたちひとつになったね」
「はい」
「もっと奥までちょうだい」
しず子は自分から足をあげてマサシを根元まで咥えこむと、マサシの太腿に足をまわしてぎゅっと締めつけた。
「うれしいよ、マサシ」
「しーしゃん、ボクもうれしいです」
(ああ、マサシがアタシの中にいる)
自分の中で脈打つマサシを感じる。それだけでしず子は天にも昇る気持だった。太腿でマサシのお尻を締め上げ、自分の中のマサシをたっぷりと感じた後、しず子はようやく足を緩めた。
「マサシ、動いて」
しず子はマサシの腰をつかむと、上下に揺らした。その動きに合わせて、マサシがゆっくりと動き出した。
「あああん、あああん」
マサシの動きに絞り出されるように、しず子はあえいだ。
(どっからこんな声が出てくるだろ。恥ずかしいよ、恥ずかしいよ、マサシ)
しかし身体の中からあふれ出てくる声は、止まるどころかどんどん大きくなっていった。その声に応えるかのように、マサシの動きが早く激しくなっていった。マサシの根元の恥毛が、しず子の割れ目のなかをゴリゴリと擦り上げてくる。擦られる度に、しず子の身体の中に電気が走った。
(ダメだよ、マサシ。アタシ変になっちゃうよ)
心とは裏腹に、しず子はねだるように腰を煽った。
ついにマサシが深く突き入れて、腰をぶるぶると震わせた。しず子はマサシが放ったことを感じ、思わず目を固く閉じた。そして本能的にマサシをきつく締めつけようと、再び両足をマサシに巻きつけて、力を込めた。しず子の身体の中心にも、ぶるぶるとした震えが走った。
耳元でマサシの荒い息遣いが聞こえる。一度放ったものの、マサシはしず子の中で固く脈打っていた。
「ああ、マサシ。凄いよ、死にそうに気持ちがいいよ」
「しーちゃん、ボクも死にそうです」
「マサシ、まだ動ける?」
「大丈夫です」
「ゆっくり動いて。アタシの中に全部出して」
「はい」
マサシが呼吸を整えながら、再び動いてきた。
「ねぇ、胸にキスして」
マサシが唇で、固くしこった乳首をついばんできた。
「マサシ、アタシの胸好き?」
「はい。このままずっと顔を埋めていたいです」
「いいよ。マサシの好きなことしていいよ」
しず子は両手を乳房の脇にあてがうと、自分から乳房を寄せ上げた。その大きな膨らみの上で、マサシが顔を左右に振った。マサシの唇が、左右の乳首を代わる代わるなぎ倒した。
「ああ、マサシ。気持ちがいい。よすぎて変になっちゃうよ」
マサシが左の乳首にとりついてきた。乳輪ごとほおばり、乳首をやさしくころがした。
「噛んで。マサシ、キスマークつけて」
しず子はうわごとのようにねだった。マサシの歯が食い込んできた。それはしず子が待ち望んでいた感覚だった。
「ああ、マサシ。凄くいいよ。もっと一杯、噛んで」
そういうとしず子は再び太腿に力をいれて、身体を震わせた。
こうしてマサシが乳房を甘噛みしながら動き続けている間中、しず子は甘い声をあげながら何度も何度も身体を震わせた。誰かに命じられているかのように、しず子は口をつく甘い声が止められなかった。
仰向けになったしず子の二の腕に、マサシがぴったりと唇を寄せていた。しず子はマサシの下になっている片手を握って、ぼんやりと天井をみていた。しず子の方に横向きになっているマサシは、上になった手を乳房にのばし、優しく揉み上げていた。
「マサシはオッパイ触るのが好きなの?」
「はい」
マサシが正直に答えた。
「小さい頃にお母さんがいなくなったから、オッパイが恋しいんだね」
「そんなことないです」
マサシがちょっと怒った口調になった。
「怒らないでよ。からかっただけだって」
しず子は笑いながら、そう言った。
「そうじゃなくて。お婆ちゃんが亡くなった日に、しーちゃんに抱きしめてもらって、ボクは凄く幸せだったんです。その時からしーちゃんの胸が好きなんです。だからお母さんとは関係ありません」
「ふーん。あの時から、アタシの胸に興味があったわけ?」
「興味があったのはもっと前です」
マサシの正直な答えに、しず子はクスリと笑った。
「二人で自転車に乗って、色々話すようになった頃からです」
「へぇー、じゃあ、その頃からアタシの胸を見たりしてたの?」
「はい、時々こっそり見ていました」
「どう思った?」
「大きくて、柔らかそうだなって…」
「触りたかった?」
「はい。凄く触りたかったです」
「ははは。マサシはエッチだな」
「ダメですか?」
マサシが乳房から手を離した。
「そんなことないよ。マサシが見てくれて嬉しいよ」
そう言うとしず子は寝返りをうって横向きになり、マサシを見つめた。
「アタシ、マサシのこと大好きだよ」
思い切って、しず子は告白した。初めて好きという言葉を口にしたのだ。
「ボクも、しーちゃんが大好きです」
「ホントに?」
「ホントです。しーちゃんが世界一好きです」
「ありがとう。うれしいよ」
しず子はマサシの手をつかむと、乳房に押しあてた。マサシが喜ぶ子犬のような顔になった。
「しーちゃんの胸は、大きくて本当に綺麗です。雑誌のグラビアに出てくる人みたいです」
「へー、マサシもそういうの見るんだ」
「時々、コンビニで立ち読みします」
「水着のとか、裸のも見るの?」
「裸のは他のお客に見つかると恥かしいので、時々です」
「マサシも男の子なんだね。でもこれからは、そういう写真見ちゃだめだよ」
「はい」
「マサシが見ていいのは、アタシのだけ。分かった?」
「はい、わかりました」
「ねぇ、マサシ。一緒にお風呂に入ろうよ。…ダメ?」
「いいですよ。入りましょうよ」
マサシがゆっくりと起き上がった。追いかけるようにしず子も毛布から這い出て、立ち上がった。心地よい疲労感が、しず子の全身を包んでいた。ふと傍らを見ると、夜景の灯りの中に、裸のマサシが浮かび上がった。しず子は恥かしくなって、慌てて胸と股間を手で隠した。すると突然、マサシが胸を覆ったしず子の腕をとった。
「あっ」
マサシがしず子の腕を自分の首にかけると、両足をすくってしず子を抱き上げた。しず子は裸で、お姫様のようにマサシに抱きあげられた。
「危ない、アタシ重いから落とすよ。」
「平気ですよ」
そういうとマサシは歩き出した。
「マサシ、結構力があるんだね。やっぱり男の子だね」
そう言うと、しず子はマサシの頬にキスした。
部屋とはうってかわって、浴室の中は眩しいほど明るかった。マサシの腕からすべり降りたしず子は、シャワーの栓をひねると、すぐにマサシに抱きついた。自分から言い出したものの、明るい照明の中で裸を見られるのが、しず子は恥ずかしかったのだ。そこで自分の裸を隠すために、しず子はマサシにぴったりと身体を寄せたのだった。
勢いよく降り注ぐシャワーのなかで立ったまま抱き合った二人は、頭からみるみるずぶ濡れになっていった。
「マサシ、背が高くなったね」
見下ろすほど背が低いと思っていたのに、こうして抱き合ってみると、いつの間にかマサシのおでこはしず子の目のあたりまできていた。
「そのうちアタシを追い越すのかな」
「わかりません。でも、最近、急に伸びてきました」
「なんか、アタシより大きくなったら、マサシじゃなくなるみたいだ」
「いやですか」
「そんなことないよ。やっぱりマサシはマサシだから…」
「しーちゃん、キスしてもいいですか?」
「うん、しよう」
マサシが少し伸びあがって、しず子に唇を寄せてきた。しず子はそれを受け止めて、マサシの口の中に舌を入れた。激しく音を立てながら、二人は口を吸い合った。
(ああ、マサシとずっとキスしていたい)
しず子は身体が痺れるような感覚に、身もだえした。そして脇の下から背中に回っているマサシの両腕をつかむと、それを押し下げた。マサシの手がしず子の背中を滑って、お尻の膨らみを捉えた。
「マサシ、お尻をぎゅっとして」
マサシは手のひらに力を込めてしず子のお尻を握り、思いっきり抱き寄せた。マサシの固いものが、しず子の下腹に密着した。それは激しく脈をうっていた。しず子のお尻の弾力を確かめるように、マサシがお尻の肉を揉み上げてくる。お尻がきつく握られるたびに太腿の奥が引きつれて、しず子はじんじんしてきた。
(ああ、マサシ。…いい)
しず子は激しくマサシの舌を吸い上げた。
それから二人は湯船にお湯を張って、一緒に入った。裸がお湯の中に隠れたことで緊張が解けたしず子は、子供のようにはしゃぎだした。
「マサシ、これ知ってる?」
しず子は手で水鉄砲を作ると、マサシの顔にお湯をかけた。驚いたマサシが、子犬のような顔で笑った。
二人は湯船の中で、子供のようにお湯を掛け合って遊んだ。大はしゃぎしていると、時折はずみでしず子の乳首がお湯のなかから顔を見せる。するとマサシの視線がそこに釘付けになるのがしず子には分かった。それが恥ずかしく、でも、とても嬉しかった。
身体を拭いて再びベッドに戻ると、二人は向きあって横になった。
しず子が毛布の中でマサシを手で探った。そっと触れると、そこはすでに固く脈打っていた。しず子はそれを優しく握った。
「マサシ、こうすると気持ちいい?」
しず子は握ったものを、ゆっくりとしごきながら聞いた。
「はい」
「ねぇ、マサシも触って」
「は、はい」
マサシの手がしず子の股間の膨らみに伸びてきた。三角形に盛り上がった膨らみを包み隠すように、マサシが緊張で震える手をあてがってきた。しず子は少し太腿を開いた。そしてマサシの中指を、その奥にあてがうように導いた。
「ゆっくり動かして」
マサシの手がゆっくりと滑り始めた。
「そう、そう。はあああ」
しず子は思わず甘い声を上げた。
「マサシ、気持ちいいよ」
「しーちゃん、ボクもです。もう痺れそうで、我慢できません」
慌てて、しず子は手の動きを止めた。
「まだだよ。もうちょっと我慢して」
しず子はそう言うと、マサシをなだめるように優しく握った。マサシは興奮を抑えようと呼吸を整えながら、しず子にあてがった手を動かし続けた。擦る度に、中指がしず子の奥深く入り込んできた。
「はああん」
しず子は甘い声が混じったため息をあげた。そしてついに我慢が出来なくなって、しず子はマサシから手を離すと寝返りをうって仰向けになり、太腿を大きく開いた。
「いいよ。マサシ、来て」
マサシがしず子の太腿の間に腰を割り込ませ、覆いかぶさって来た。そして一気に貫いてきた。
「うっ、いい。ああん」
しず子はマサシにしがみついた。マサシは二人の間に手を割り込ませると、両方の乳房に手をあてがい揉み上げてきた。そして喘ぎ声を出すしず子を黙らせるかのように唇を捉えると、舌をすべり込ませてきた。
「うううん、うううん」
しず子はマサシの舌をほおばりながら喘ぎ続けた。そして口の中の奥深くまで舌を導き入れると、唇をすぼめて吸い上げた。上も下も、身体の中がマサシでいっぱいになった。
(あああ、なんて気持ちがいいんだろう。幸せすぎて、頭が変になりそうだ)
思い切り舌を吸い上げた後、しず子は唇を外すと、マサシの耳元で囁いた。
「マサシ、好きだよ。大好きだよ」
マサシがしず子の耳に唇を当ててきた。
「しーちゃん、好きです」
「もっと言って。ずっと言って」
「しーちゃん、大好きです」
マサシは呪文のように耳元で囁きながら、腰の動きを早めて行った。そして両手を乳房から離し、しず子のお尻の下にこじいれると、お尻を思いっきり握ってきた。
「ああ、スゴイ、ああ」
しず子は身体を弓なりにそらせて、股間の膨らみをマサシに密着させた。そして喘ぎ声をあげながら、身体を震わせた。
その日、二人は朝まで愛し合った。

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